短編

□収穫アリ!
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「あら!?あれ、何かしら?」
「んー?何が?」

放課後。
帰宅途中であかねの指差す方を見ると……。

「……猫っ!?」

汚いダンボールからのぞく顔に、慌てて電柱を駆け上がる……。
情けないって!?
しょうがねえじゃねえかっ!こえーもんはこえーんだよっ!

「もうっ、子猫じゃない」
「うるせーっ、寄るなっ!……あっ!」

猫を抱き上げて不適に笑うあかね……。
ああもう寄るんじゃねえっ!
なんでこいつはわざわざ抱き上げて俺のほうへ来るんだよ!?

「来んじゃねえよっ!」
「ほーらほーら」
「んなもん近づけるなっ!」
「かわいいのにー」
「かわいくねえっ!」

いつもはあかねに言うセリフ、つい猫に言っちまったじゃねえかっ!

「かわいいっ。よしよし」
「おいっ!どこ連れてくんだよ!?」
「え?うちに決まってるじゃない。このまま捨ててなんていけないでしょ?」
「捨てちまえっ!動物なんざ野生で生きろっ!」
「うるさいなあ」

よいしょ、と子猫の顔を肩に乗せるあかね。
まさかまさか、本当に連れ帰るんじゃねえだろうな!?

「ふわふわーっ。かわいいなあ」
「……かわいくねえっ」

あかねから離れ、後ろを出来るだけ猫を見ないようにして歩く……。
なんだってあんな生き物がかわいいんだよ!?
あんなもんがいたらあかねの横、歩けねえじゃねーか!






「……ぁっ……」






「へ!?」

突然耳に入ってきた……声。


「ぃゃっ……ちょっ……」
「お、おい……?」
「ゃぁんっ!」
「……!?」

な……っなんっちゅー声を出すんだよ!?
しかもこんな往来で!(いや、誰もいないけど……)

「ぁあっ……だめぇっ……」

や…………やべえっっっっ!!
おおおお俺のがっ!反応し始めたっ!!
しっ仕方ねえだろ、この状況っ!

ってか、なんでこんな声!?
あかねになにが起こった!?

「……っらっ、乱馬ぁ……っ」
「はっ、はいっ!?」
「来てぇっ!」
「……は!?」
「早くぅっ……」
「え!?あの、え!?」

来てって!?早くって!?
ここここっ、こんなとこで!?
いやっさすがに俺もこんな往来では……人いねーけどっ!

そうか!
人がいないからいいんだな!?
そうかそうか!!
なーんだまったくかわいいやつめっ。

「ぁっ……ぁんっ……だめってば……ぁっ……乱馬ぁ……っ」
「……あかね……」
「早くぅ……ら、らん……っ」

身悶えるような動きにズキンズキンと俺のが痛いほどに硬くなっていく……。
何度か見た、暗闇に浮かび上がる細くやわらかい身体が思い浮かぶ。

「ぁぁぁ……っ」

あかねの艶めいた声に完全に理性がぶっ飛んだ俺。
引き寄せようとあかねの肩に手を……。



「にゃぁんっ」
「……猫っ!?」

バリバリバリバリッ!!!

「っぎゃーーーーーーっ!!!」



顔に感じるピリピリピリとした無数の痛み。
そして顔に手に触れるいやーな毛の感触……。

「ね゛こ゛ーーーーっ!!」

思わずあかねから離れてジタバタと暴れるうちに、猫は飛び跳ねて逃げていった。


「ぜーっぜーっぜーっ……」
「あーよかった。ありがと、乱馬」
「ぜーっぜーっ……なっなにを……」
「あの猫がね、首のとこを舐めるのよ。もうっ、汚れちゃったわ……」
「……へ……?」


猫が……首を?舐めただって!?
あかねの首を!?



俺のあかねの首をっ!猫が舐めただとーーーっ!?!?



ちっくしょー猫のやつっ!
あかねの身体舐めるなんざ百年早ぇんだよっ!
俺が俺が俺がっ!
どんだけ辛抱してあかねを手に入れたと思ってんだっ!?


ティッシュで首を拭くあかねの腕を掴む。

「な、なによ?」
「帰るぞっ!」
「え?ちょっと……なに?何怒ってるの?」
「別にっ!」
「別にって……ちょっと、ねえっ!」

無理やり引きずるように家に向かって歩き出す。


もうアッタマきたぜ!
あかねの首は『消毒』だな、うん!


まあでもとりあえず、収穫はあったから良しとしよう。


あかねは首に弱い!


これからきっちり確認してやるっ!!




…完…

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