短編

□戸惑って惑わせて
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【R side】

「あれ、ゆか?」
「え?あっ!乱馬くんじゃない!」

おふくろに頼まれて来たショッピングセンター。
俺は目を疑った。
だって、今日はあかねと一緒じゃなかったのか?
あかね、ゆかの家に行くって出かけたよな?

って……後ろの女?
あれ?なんかあかねに似てる……?

「乱馬くん、なんでここにいるの?ひとり?」
「ああ。ここのクリーニング屋におふくろの着物を持って来たんだよ」
「へー、おつかいか」
「なんか小学生みたいだな、その言い方……。ゆかは買い物か?」
「うん、あ、そうそう!」
「きゃあっ」

ゆかに引っ張られて前に出たその女。
躓いて転びそうになったのを、思わず支えた。

「おっと、大丈夫か?」
「え?」

見上げられたその顔は、やっぱりあかねで。
でも……。

「へ……?」
「?」

思わず凝視してしまった。
なんだ!?この……色香?
化粧のせいなのか!?
それともやたらと露出度が高い服のせいか!?
やたらと、その……いっ色気が……っ!

「ちょうど良かったわ、乱馬くん。あとは任せた!よろしくねー!」
「あっ、ちょっと!ゆかっ!」
「おいっ!ちょ……っ!?」

突然のことに立ちすくむ俺とあかねを置いて、ゆかがさっさと走り去っていく……。
呆然とした様子のあかねの肩に手を置いた。

「なあ……俺、どうすれば……?」
「どう、って……」

だってカツラとか服とか靴とか、あかねのじゃないよな?
ゆかの?
返さなくていいのか?
それともゆかの家までついて行けって!?

まっ、まあ……付いていくけど!
だって危険だろ、この格好!
見ろよ、男共が明らかに普通と違った目で見てんじゃねえかっ!

こいつは俺んだっ!んな目で見てんじゃねえよっ!!

「え、と……あ、あなたは……?」
「は!?ら、乱馬……」

って!なに普通に答えてんだ、俺!?
あかね、何言ってんだ!?
俺を忘れちまったんじゃ……って、だったらゆかから一言あっても良さそうなもんだけど……。
確かにいつものあかねとは別人みたいだから、俺も緊張するけどよ。

「ねえ、どこかに連れて行って?」
「へ!?ど、どこかって?」
「楽しいところへ」
「んなこと言われても……」

なななっ、なんで!?
どうしたんだ急に!?
っつーか、なんだその笑顔は!?

化粧していつもより大きく際立った目と、ぷるぷるした唇。
柔らかく微笑むあかねに、俺の心臓がバクバクとなりはじめる。

「ったく、どうしろってんだよ……」

ため息交じりの呟き。
こんな、かっ……かわいい、あかねと一緒、なんて……。
俺の心臓、もたないかもしんねえっ。

照れちまってあかねを直視できないでいると、ふと腕に重みが……。

「おわっ!なっなんだよ!?」
「……いや?」

って!腕!組まれてる!?
なんで!?どうして!?
どうしちまったんだよ、あかね!?!?

っつーか、なんだその上目遣いは!?
反則だろ、完全にっ!
シャンプーにいつもされるけど、こんな心臓バクバクしねえっ!
なんであかねだとこうなっちまうんだ、俺はっ!?

「いいいいっいやじゃ、ねえけど……」
「……彼女に、見られたくない……?」
「誰だよ、彼女って?」
「……」

……なんだ、彼女って??
またどっかでなんか聞いたか見たかして変なヤキモチ妬いてんのか?

「じゃ、行きましょ」
「へ?どこに?」
「ふふ、こうしてるとデートみたいね?」
「で……っ!?」

デート!?
デートっ!!
あかねとデートっ!!!
うううううううううわわわわっ!
やべえ、めちゃくちゃ嬉しいじゃねえかっ!
すげー素直だし可愛いしっ!
なんか今日のあかねは変だけど、こんな『変』なら大歓迎だぜっ!

あかねのぬくもりを腕に感じながら、俺達は歩き出した。
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