小話

□眠りの中で
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【R side】


「乱馬のばかっ!」
「けっ、勝手にヤキモチ妬いてろっ!」
「誰が妬くかっ!」
「ぐえっ!!!」

みぞおちにキレイに入るとすっげー痛いんだぜ!?
わかってるのか、このズンドーはっ!?

……わかってるよな、そりゃ……あかねだって格闘家なんだからよ。
って、わかってんだから手加減くらいしやがれってんだっ!
仮にも許婚なんだぞ、俺はっ!







「げ」

宿題があったことに気が付いたのは、もう日付が変わるって時間になってからだった。
こりゃあかねに頼るしか……いやいや、さっき殴られたとこだっての。
かといって自分でできるようなもんじゃねえし。
明日提出できなければ冬休みいっぱい補習……。

ええいっ!背に腹は変えられねえっ!



トントン。

「……あかね……?」

返事がない。
やっぱりもう寝てるよな……あいつ、早朝トレーニングしてるし。

そっとドアを開けると、暗い部屋に細く月明かりが差し込んでいた。
パジャマ姿のあかねがベッドから落ちそうなほど端っこに眠っている。

「……相変わらず寝相が悪いな」

こっそりあかねのカバンから宿題を抜き取ろうと思って来たはずなのに……なぜだか俺はあかねから目を離せずにいた。

月明かりにやさしく照らされた寝顔。
俺を殴ってるときはまるで般若のような顔をしてるくせに。
今は……。

落ちないようにゆっくりとあかねを抱え、ベッドの壁際に寝かせた。
多少動いても落ちないように。

いつもいつも、ついあかねに手が伸びる。
頬に触れると、思った以上に手に馴染むその皇かな肌にドキリとする……。

呪泉洞から帰ってきて半年。
俺達にはなんの進展もなかった。
だから……後悔、してるんだよなあ……。
なんであの時、あかねに問い詰められたとき、俺は否定しちまったんだろう?
あのとき俺が自分の気持ちを認めていれば、今頃はきっと……。

「ほんとは……大事にしたいって思ってんだぜ?」
「……」
「んなこと、おめえが起きてたら言えねーけどよ。それでも……」
「……」
「ずっと、お前だけだから……」

ぴくり、と一瞬だけ、あかねが反応した気がした。

「……あかね……?」
「……」

気のせい、か?
……だよな。うん。



って!俺っ!!
なに言っちゃってんだっ!?
いくらあかねが寝てるからって寝てるからって寝てるからって!
あああああああっ、ガラでもねえっ!

なのになのになのにっ!
手、動かせねえっ!
なんでこんなに気持ちいいんだ、この頬は!?
なんでこんなにさらさらで柔らかいんだ、この髪は!?
なんでこんなにぷるぷるなんだ、この唇………………。

ってーーーおいっ!
なに触ってんだよ、俺は!?
あかねが起きたらまた変質者扱いされるぞ!?

ああああもう部屋出ろっ、出るんだ俺っ!






慌てて、でもあかねを起こさないようにそそくさと部屋をあとにした。
そして翌日、宿題を提出できずに補習決定……のはずが。
やけに俺を庇ってくれたあかねのおかげで、提出期限が延びた。

なぜか妙に機嫌の良いあかね。
まさか……まさか、な!?



…おわり…

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