小話
□乱馬くんのゲンカイ
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【R side】
……オアズケなんて、ロクな結果になりゃしねえ……。
「あれ?あかねは?」
科学室から戻る途中、あかねがいないことに気が付いた。
今日はゆかと一緒のグループだったはずなのに、廊下にあかねは見当たらない。
「あかねなら日直だから片付けしてから戻るはずよ」
「ああ……って、え!?怪我してるのに!?」
「わたし達も聞いたんだけど、大丈夫ってあかねが言い張るのよね……気になるなら乱馬くん、見にいってあげてよ。私たちが行っても追い返されるだけだから」
「ああ、わかったよ」
昨日、おれとの乱取り稽古で痛めた右手首。
まだ自由には動かせないはずなんだ。
……だからあかねと稽古するのはイヤだって言ったのによ……。
ちゃんと告白して付き合い始めてから半年。
ことあるごとに稽古をつけて欲しいと言うあかねを、俺はずっと突っぱね続けてきた。
だって怪我させちゃマズいだろ?
なのにあかねの奴っ。
『稽古つけてくれないなら、もう乱馬には触らせないんだから!』
って!!触らせないって何に!?
……なんて聞くまでもなく……。
手を繋ぐのも、キスするのも、もちろんベッドインだって拒まれ続けたんだぜ!?
俺はなあっ、鍛えてんだよ!元気なんだよ!
普通の男子高校生と一緒にするなよ!?
自分で言うのもなんだが、底なしなんだぜ!?
それをそれをそれを………………!
ガマンなんてできるかあああああぁぁっっっ!!!
……で、結局。
負けたわけだよ、あかねに……。
けどっ!!稽古とはいえ久々に感じるあかねのぬくもり……っ!
だから……ボーっとしてた俺が悪かった。
気が付いたら仕掛けられていたあかねの攻撃、思わず本気で反撃しちまった……。
「あかねー?」
俺の反撃をよけたあかねが尻餅を付いた、そのときにやっちまった右手首。
利き手だからなぁ……おやじにもおじさんにも散々お小言くらっちまった。
言われなくても分かってるさ、俺だって……。
だからこうして常にあかねの動きには目を配ってんだ。
責任ってのをな、とらなきゃなんねえから。
……最終的な“男の責任”=“結婚”は当然考えてるけど。
「いねえな……準備室か?」
科学室の小さな扉を開けた先、小さな部屋にあかねの姿を発見した。
「乱馬?どうしたの?」
「律儀にやってんなあ、おい」
「なによ、どうかした?」
「遅いから来てやったんじゃねーか、まだ終わらないのか?」
「ん、終わったわよ。行こ?」
「……」
不自然な動きで左手でドアを開けようとするあかねの肩に手をかけた。
「右手は?」
「もう大丈夫よ。ちょっと痛いけど、そんなには……きゃあっ」
「まだ少し腫れてるな……」
「ちょ、乱……!?」
ちゅ、と手首にキス。
そのまま腰を引き寄せて抱きしめた。
「乱っ、ちょ……っと!?」
「んー?」
「なにっ、ココ学校……っ!」
「知ってる」
ったく、こんな密室で1人になりやがって!
来たのが俺じゃなかったらどうすんだ!?
……なんてのは言い訳だな。
だってよ、怪我させてから全然ヤレる雰囲気じゃないんだよ!
痛がってるからしょうがないんだけど、だけどでもっ!
ああああああっ、あかねに触れてえっ!!
「……あかね、ちょっとだけ……な?」
「ちょっとってなによ、ちょっとって!?」
「……あかねが、欲しいんだよ……」
「っ!?」
実は知ってんだ。
少し声を低くして耳元でこう言うと……。
「……ば、ばかぁ……」
きゅ、と俺の袖を掴み、デコをこつんと俺の肩に当てる。
……なんだよ、あかねも待ってた雰囲気じゃねえ!?
耳にちゅっとキスをすると、ぴくんとあかねの体が跳ねる。
うるうるした目で俺を見上げて……そっと、目を瞑った……。
ちゅ、と軽く触れるだけのキスを繰り返す。
触れるたびに、おれにしな垂れかかるようにあかねが身体を預けてきて……。
「……ばーか」
「なによう……」
「我慢できなくなってんの、おめーの方じゃねえか」
「だ、だって……」
「うん?」
あああっ、なんつー可愛さっ!
きゅっとおれの服を掴んで、首もとに顔を埋める。
拗ねたような甘えたような、そんな顔でおれを見上げた。
「乱馬……全然、触れてくれないんだもん……」
「っ!」
だから!なんだその声!?ってかセリフ!?
触れてくれないって触れてくれないって!!!
やっぱり待ってたのかよ!?
ズッキューン!と体の中心が熱くなる、そりゃそうだろっ!?
学校!準備室!こんな狭い空間でっ!
ああああああああっ!!
ヒロシに見せられたAVにあったぜ、このシチュエーション!
試験管とかっ!スポイト使って流し込…………………………。
って、おれの趣味じゃねえよ!?!?!?
とととととにかくだな!?
あんなものもこんなものもあるわけだよ、ここには!
そこに2人っきり!あかねと2人っきり!!!
「あっ、あかねっ!」
「ら、乱……っ!?」
「おれもう、やべえっ!」
「えええっ!?ちょ、え!?」
勢いにまかせてあかねのスカートに手を潜り込ませ、太ももの感触を…………………………。
「天道さーん?終わったかしらー?」
「せっ、先生っ!!」
「!?!?!?」
えええええええええええええ!?!?!?
ちょ、ちょっと待てーーーーー!!!
準備室の扉っ!
すりガラスの窓の外!先生の影っ!!
「おっ、終わりました!教室戻りますっ!」
はあああ!?も、戻るのか!?
「……おい、あかね」
「しっ!静かに!」
……ちょっと待て……どうしてくれんだ、このムスコをよ……。
先生の気配が消えたのを確認して、あかねにズイと近付いた。
「おいっ」
「だっダメよ、休み時間終わっちゃうっ」
「……」
するり、とおれの腕の下を潜り抜けてドアのほうへ……。
ああもう、こうなったらあかねは絶対にヤらねえんだよっ。
「あかねっ!」
「なっなにっ!?」
「今夜、覚悟してろよ!?」
「……っ!」
途端に真っ赤なゆでだこ状態……。
それはそれで可愛いけど、でも!
その程度じゃおれのムスコはおさまらないんだぞ!?
無防備な姿さらした責任ってのを取ってもらおうじゃねえか!
「わかったな!?」
「う……わ、わかったわよ……」
よっしゃあっ!!
とりあえず落ち着け、ムスコ!
夜になったら出してやるからな!!
絶対出してやるからなーーーー!!!!
…END…