長編

□甘えてみたい
2ページ/10ページ


……あかねが変だ。

あの日から……いや、正確にはあの日のあのときから。
突然抱きついてきて、すんげーやわらかかっ……じゃなくて!
なにがあかねをそうさせたのか、全然見当もつかねえ。
けど、あの日からあかねが本当に妙なんだよな……。



「……っ!?」

あかねの部屋で、あかねが宿題をやるのを待っていた俺。
当然、写すためな。
ベッドに座って漫画を読んでいた……のに!
いつの間にこいつは俺の横に来たんだ!?
なんで突然、腕組まれてるんだ!?

あああああああむむ胸が当たるんだって!
フワフワだしムニムニだしあったけーしやわらけーし……。
うおっ!?ミニスカートから太ももがっ!
ムッチムチじゃねえかっ。
って、ちょっと待て!シャツのボタン、上が開いて……うぉああああ谷間っ!!
あわわわっ、反応するなムスコっ!!!

ココ、ベッドなんだぜ!?
わかってんのか、こいつは!?
いやいやそもそも女の部屋のベッドの上にいる俺も悪いんだけど!?
って、いーじゃねーか別に許婚なんだし!
そうだよ押し倒したっていい……わけねーだろっ!

「ああああああかね、さん……?」
「んん……」

ってオイっ!寝るのかよ!?

「ん……ふぅん……」
「っ!!!」

なななんちゅー声、ってか吐息っちゅーのか!?
ああ、腕が重い……イヤじゃねえよ、全然っ。
むしろ気持ちいい感じの……ああ、このまま服はぎとって……ってバカか俺はっ!!

……あれ!?この重み……おいおいっ本気で寝やがったっ!
そういや今日はテニス部の助っ人してたって言ってたな。

……ん?テニス部?
じゃっじゃあアレ履いたのか!?
あのピラピラのパンツ丸見えの!?
いやっ、あかねが言うにはパンツじゃないらしいんだが……。

他の女があれ履いてたって別にどうとも思わねえけど、あかねだと違うんだって!
男共が変な目で見やがるしよっ。
ああああ、俺がちゃんと見張っとけばよかったぜっ。
そしたらあかねのパンツも見……ってだからパンツじゃねーっ!

ああやべえっ、このままでいたら絶対理性ぶち切れるぞ!?
さっさとあかね寝かせてこの部屋出ねえとっ。

おっ、起こさないように……えーと、腕はずして……って、離れねえっ。
どんだけ馬鹿力だ!?
じゃあ、うーん……あ、このまま押し倒せばいいのか!
……って下心なんてねえぞ!?
ただ寝かせるだけだ、寝かせるだけ!

「……ん……」
「っ」

起きるなよ起きるなよ……こんな体勢で起きたら……また殴られる!
別に夜這いかけたことなんてねーけど、前にP助にしてやられた時にゃ本気で誤解されたもんな。
……まあちょっと……かなり心臓バクバクだったのは、誰にも言えないけど……。

あっ、しまった!
頭と枕の間に腕が挟まっちまったぜ。
ぬ、抜けるか?
起こさないように、ゆっくりゆっくり……。

「ふぅん……」

ああああああああっすっげーいい匂いするっ!
もももうちょっとだけ、もうちょっとだけこのまま………………。

「……ら、んま……?」
「ひっ!?」

おっ起きた!?
ぽやっとした目がくるりと回る……メチャクチャ可愛いじゃねえかっ。
って、んなこと言ってる場合じゃねえっ。
殴られる前に弁明しないと!

「おおおお俺は別に何もしてねえぞ!?たっ、ただお前が寝ちまったから横にしようと……」

あわあわと焦って口走る俺を、あかねが上目遣いで見上げた。

「……それだけ、なの……?」
「……へ?」

な……それだけ、ってなんだ!?
え?え?なんだそれ!?

あかねの小さな手が俺の胸のあたりをきゅっと握り締める。

こいつ……っ、誘ってんのか!?
誘われてんならノリますけど!?いいのか、おいっ!?

と思ったら……あかねがゆっくりと……目を、瞑った……。

「……ん……」

もう……本能のままに何も考えることなく、ただあかねを求めて……口付けた。
あー……こいつの唇、やらけえ……。

「……乱……馬……」

ちっちぇー声で囁くように、切れ切れに俺の名を呼ぶ。
俺はとろけるようなその感覚の中、意識がすっ飛んだかのように何も考えられなくなっていた。
何度も何度も、その甘い唇を味わう……。

体の奥の方が、もっともっとと疼きだす。
酸素を求めて小さく開いた唇から、少しだけ舌を割り込ませた。
ピクリ、と震えた舌が……恐る恐る、俺の舌に触れた。
電流が走ったかのような衝撃が俺を襲う。

「あかね……」
「ぅん……」

も、止まんねえ……。
このままあかねを……………………。








コンコンッ。


ごつっ!!

「「いい゛っ……」」

「あかねちゃん、起きてる?」
「おっ、お姉ちゃん!?」

やべえやべえやべえっ!

ノックに驚いて思いっきりデコ同士ぶつけちまった俺とあかね。
痛みを堪えながらも咄嗟にベッドから飛びのいた俺、咄嗟に椅子に座ったあかね。

……やるじゃねえか、俺たち。

「なあに?どうしたの?」
「えんぴつ、貸してもらえる?家計簿つけてたらストックがなくなっちゃって」
「いいわよ。この間買ったばかりだから」
「ありがとう」

あかねからえんぴつを受け取って部屋を出るかすみさん。
……が、一言。

「仲良しさんね」

にっこり、と菩薩のような微笑みを浮かべ、ドアがパタリと閉じられた。
思わずあかねと顔を見合わせる。

「「っ!」」

あかねのデコ、赤っ!
ってことは俺も!?

そうか!かすみさん、これを見て状況を把握……っ!?
うわっ、すっげー恥ずかしいっ!

「だっ、大丈夫よね、きっと?」
「は?」
「あの……かすみお姉ちゃんだから、その……」
「ああ、まあ……口は噤んでくれそう、だよな」

少なくともなびきみてーに集られることはない、はず。
……見られたのがかすみさんでよかった……。




って、ちょっと待ていっ!
え!?続きは!?さっきの続きは!?!?

「あの、乱馬?」
「あ?」
「これ……宿題、終わったから……」
「……」

つまり……?
……そうですか、おあずけですか……。



ええいっ!
犬か、俺は!?

次は絶対逃がさねーからな、あかねっ!!
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ