中編

□VDの一日(完結)
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 去年は小さな小さなハート型。
 今年は……さあ、どうしようか?





ガッシャーンッ!

「乱馬さまっ、お待たせいたしましたっ!」
「でえっ!?待ってねえっ!」

朝一番。
予想通り、傍迷惑な黒バラ吹雪をまといながら小太刀が現れた。

「あかねっ!先行ってるぞっ!」

鞄をひっつかんでパンをくわえて小太刀から逃げるように居間を出る乱馬。
あまりにも予想通りすぎる展開にため息すら出ない。



乱馬に遅れて学校に到着。
あたしを待っていたって叫ぶ九能先輩を軽く飛ばして教室に入るも、乱馬はいない。

わかってる。
きっと下級生からの呼び出しだ。
普段から三人娘との追いかけっこで目立つ乱馬、顔だって悪くないから下級生が騒ぐのはわかる。

けど……あたしっていう許嫁がいるのにな……。
そりゃ、あたしだってなかなか素直になれないし、乱馬だってはっきりしないし。
だけど、本当にイヤだったらとっくに許嫁解消してるのに。


その後も休み時間になると乱馬は教室を出てく。
そんなに呼び出しが多いわけ?

なによなによなによっ、あたしの許嫁なんだからねっ!


そして予想通りの昼休み。
ドゴーンと壁や窓を破壊してくるチャイナ娘……。

「乱馬っ!愛情たっぷりチャイニーズバレンタインねっ。いつもの肉まんをチョコまんにした、食べるよろしっ!」
「だあっ!いらねえよっ!」

『いつもの』が強調されてたように聞こえたのは、あたしのヒガミかしら!?
それともシャンプーのあたしへの牽制!?

窓から逃げ出す乱馬をよそに、やっぱり予想通りにシャンプーと右京が喧嘩し始める。


「あかねあかねっ!」
「……っ!?え、なに!?」
「なにって……」

あきれたようにあたしの前でお弁当を食べる友人達。

「いつものことじゃない、そんな青筋立てなくても……」
「え?そんなことないわよっ!」
「……」

友人が黙って指差した先は……。

「きゃあっ!この箸、気に入ってたのにっ!」
「それだけバキバキになってちゃ、もうダメね……」
「……ぅぅ……」

もうっ、乱馬のせいよっ!

「で?」
「え?」
「用意は出来てるの?夜が勝負なんでしょう?」
「うっ、うん……材料は、うん……」
「頑張ってねっ!絶対大丈夫よっ!」
「ん……ありがと」

応援してくれる友人には悪いけど……。

ダメ、かも……。

だって朝からずっと色々な女の子の相手してるみたいだもの。
きっと、気持ち悪くなるくらい甘いもの食べてるよね。
夜には、お腹いっぱいだろうな……。



放課後になっても相変わらず三人娘に追われて呼び出しもあって忙しそうな乱馬を置いて、あたしは先に帰った。
三人娘は諦めたりしないから、きっと帰宅は夜だわ。

乱馬が帰ってきたら、あたしも頑張るんだから!
他の子のチョコ食べて、あたしのは口を付けなかったりしたら……許さないんだからねっ!
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