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□Fell in love the moment
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一日目が終了し、皆それぞれの宿に向かっている。
が、俺は宿とは逆方向に足を向けていた。

「どこだ‥‥っ」

キョロキョロと辺りを見渡しては、綺麗になびく金糸を探している。

当たって砕けろ。

今日、ずっと頭の中で念じていた。
返事なんてどうでもいい。
これから俺を意識してもらえば、いい。

失敗を恐れるな。

今日、俺は告白する。
恐れることなんて、なかったんだ。
ナツさんとの関係なんて、明らかではないし。
仮に“そういう関係”だったとしても、ナツさんには負けない。
力も、恋も。

「‥‥あれ‥‥」

目線の先には、綺麗な金糸。


ルーシィだ。


頭がそう判断する前に、身体は勝手に動いていた。
いちもくさんに、走って。
彼女を見失わないようにして。

やっと‥‥、追いついた。

「あ、えっと‥‥あんたは確か“剣咬の虎(セイバートゥース)”の‥‥」

俺と目が合うと、そう言ってくれた。

俺のこと、覚えててくれた。

そう思うと、頬がゆるむ。
が、緩みそうになる頬を、必死に押さえ、俺は彼女に話しかけた。

「ちょっと、話したいことがある」

そう言って、俺は彼女を連れ出した。



「で、話ってなんなのよ?」
「あ、いや‥‥それはぁ‥‥」

ヤバい。
いざとなったら、なかなか言葉が出てこない。
必死に言葉を紡ぎ出そうとしても、出てくるのは曖昧な言葉だけ。

そんな俺に、怪訝そうな顔をし、ルーシィは俺を見つめる。

あぁ〜、かわいいなぁ。

「? お〜い、どうしたの?」
「あ? べ、別に‥‥」

何で、言えないんだ。
言え!
言えよ、俺!

俺は一回唾を飲み込み、意を決した。

「る、ルーシィ」
「はい?」

言え!
“好き”って、言え!

「俺、俺は‥‥ルーシィのことが‥‥。す、好‥‥」
「‥‥?」

「好き。だ」

「なっ!?」

恐る恐る彼女の顔を見ると、顔を真っ赤にさせ、動揺しているようだった。
たぶん、純情なのだろう。

「俺は、何があっても諦めねぇタチだからな。覚悟しておけよ」

そう言うと、俺は彼女の返事を聞かずにその場を去った。
正直いうと、怖かったのだ。
返事を聞くなんて。



その後、彼女が顔を真っ赤にさせ、返事をするまで、あと10秒。



ーendー



 
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