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□姫君の気分次第
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「おい! ルーシィ!」

「何よナツ、言っとくけどこのジュースはあげないわよ」

「ちげぇよ、そんなことじゃねぇよ」

「じゃあ何なのよ」


ルーシィが少しイライラしながら言うと、ナツの頬は風船のようにぷくっと膨れる。

最近、ナツはルーシィの笑顔が見たくて、ずっとルーシィを観察していた。

そして気づいたことがあった。

ルーシィは、ナツの前ではあまり笑わないのだ。

その事に気づいたナツは、不満に思った。


なぜ、自分の前では笑わないのか?


その事がドロドロと渦となって頭を駆け巡る。

しかもナツは、なぜそんな事が気になるのか分かっていない。


「なぁ、教えてくれよ」

「何をよ?」

「なんでこんなにもルーシィの笑顔が見たいんだ?」


ナツが言った瞬間、ルーシィは飲んでいたタピオカジュース(ミルクティー)をまるで鯨の潮吹きのように噴いた。


「んだよルーシィ、汚ねぇじゃねぇか」


ナツが呆れたように言うと、ルーシィはナツをキリッと睨む。


「だってアンタがイキナリあんなこと言うから……!」


ルーシィの言うとおり、あの言葉は愛の告白にも等しい言葉である。

まさか、愛の告白?

と、ルーシィは一瞬思ったが、ナツなんだから、と自分に念を押した。

もう、勘違いするのは懲り懲りなのだ。


「まぁいいわ、あっち行きなさい。邪魔よ」

「いやだ」


ナツがここに居ると決め込んだとき、ふとどこからか声が聞こえてくる。


「ルーシィー!」


それは、ハッピーのもので。

そのままハッピーは、目にも留まらぬ早さでルーシィの胸に飛び込んだ。


「ルーシィ聞いてよ! さっきオイラが食べようとした魚を、ナツが食べたんだ!」


うわぁぁんと泣きながら、ハッピーはルーシィに訴える。

ナツはその横で、あっと思い出したようで、ぽんっと手をついた。


「だから、悪かったって言ってるじゃねぇか」

「ナツのバカー! オイラ、ルーシィの子になるー!」

「あはは。本当になっちゃう〜?」


ハッピーに微笑みながら冗談を言うルーシィを見て、ナツは不機嫌になる。


まただ……。

また、俺以外のヤツに笑ってる。


その事象が、ナツには気に入らなかった。

どうしてかは、分からない。

でも、気に入らないのだ。


「……だよ……」

「? 何か言った?」

「何で、俺には笑ってくれねぇんだよ……」

「なっ!?」


ナツは、ルーシィの懐に居るハッピーを睨みながら、ルーシィの両肩を掴んだ。


「俺だって、ルーシィの笑った顔が見てぇ」


2人の距離が縮まっていく。

ルーシィは今、何が起こっているか分からないほど、パニックになっていた。

もう、ルーシィの吐息がナツにかかりそうになった。

瞬間。


「で、で、でぇきてる゛ー!」


ハッピーは紅潮した顔を両手で隠しながら、どこかへ飛んでいった。

そしてナツは、今使用とした事を思い出す。


(俺、今何しようとしたんだ!?)


考えた途端、顔から火がでるくらい……いや、火がでるほど恥ずかしくなった。


「わ、悪ぃ!」


恥ずかしさのあまり、ナツはこの場から逃げる。

残されたルーシィは、何がなんだか分からなくて、ポカーンとただ座っていた。



ーendー


→オマケ


 
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