present / gift
□ただ、それだけなの。
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「うふふ。ナツってばかわいい♪」
あなたのその笑顔に、一体何人もの男が恋に落ちたのだろうか。
明るくて、優しくて、顔立ちも整ってて、スタイルも申し分ない。
そう、完璧。
その魅力的で無邪気で、どこか“女”が混じっている彼女ーーリサーナ。
そのリサーナの幼なじみであるナツに、あたしは今、付き合っている。
ナツとの出会いは、高校の入学式。
あたしのひとめぼれというやつだ。
みんなは“相思相愛バカップル”って笑ってくるけど、ときどき不安になる。
ナツは、本当はリサーナのことが好きなんじゃないか?
そんな考えが頭をよぎる。
特に、最近は。
「べ、べつにかわいくなんか、ねぇよ////」
「照れちゃって〜♪」
ほら、あんな顔真っ赤にさせちゃってさ。
あたしには、あんなこと、できない。
ナツの顔を真っ赤にさせるなんて、できない。
きっと、あたしのことなんて、好きじゃないんだ。
「おい、ルーシィ。最近オマエ、ナツのこと避けてんのか?」
「なに言ってんのよ、グレイ。気のせいじゃない?」
本当は、気のせいなんかじゃない。
本当に避けてる。
あたしが、一方的に。
ナツはきっとリサーナのことが好きなんだ。
だから、自然消滅したほうが、ナツのためにもあたしのためにも、いいんじゃないか。
頭ではこう言い訳してるけど、本音は違う。
ただのプライド。
くだらない、あたしのプライド。
もし、ナツと居たらバレてしまいそうだから。
リサーナに嫉妬してる、と。
耳に響く、心地よい鐘の音。
それは、今日の終わりを告げ、明日へのエール。
生徒達にとっては、待ちに待った放課後という至福の時を告げる音。
あたしとっては、この時間が地獄だった。
あたしとナツは、クラスが違う。
だから、教室にいれば、滅多に会わない。
でも、この時間は廊下に出なければならない。
そう、ナツに会うかもしれないのだ。
あたしは急いでバックに荷物をしまうと、全速力で教室をでた。
もう少しで昇降口というところで、誰かにぶつかった。
きっと、あたしが走ってたせいだわ。
「す、スイマセン」
「いっつーーっ」
それは、見たことのない生徒だった。
この学校は、比較的人数が少ないから、全校生徒の顔は覚えているはず。
という、ことは。
「噂の転校生?」
「あ? それがどーした」
やっぱり。
最近噂の転校生は、コイツだったのか。
「名前。何てゆーの?」
「スティング」
ぶっきらぼうに言い放つ、スティング。
少し顔が赤いのは、人見知りだからなのか。
「ふふふ」
見た目のわりに、人見知りとはギャップがありすぎて、思わず笑ってしまった。
「何がおかしいんだよ」
「ふふ。何でもない。それより、この街のことは、わかる?」
「いや、よくは‥‥」
「じゃっ、街案内してあげるっ!」
半ば強引に、あたしはスティングを街案内に誘った。
その日から、あたしはスティングと居ることが多くなった。