story

□大好きだったよ、さようなら。2
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「ルーシィ……!」




とりあえず無事で、本当によかった。

そう思ったら、抱きしめたくなって。


いつもより強く抱きしめた。


ルーシィには聴きたいことは沢山あるけど。

まずは、彼女の無事を確かめたかった。


「……何すんのよ! 離して!」
「………………え」


抱きしめた瞬間、ルーシィは俺の胸を思いっきり押した。

それは、明らかに拒絶しているソレで。


「てか、あんた誰よ!? 早く帰らないと、お父様に怒られるでしょ!?」


今、なんて、言ったんだ……?



アンタダレヨ……?

あんただれよ……?


あんた誰よ……?



「も〜離してよっ! てか、ココどこよ!?」



まさか。


まさか、この状況は。





記憶が…………ーーーー。





「おい、今、何年だ?」
「はぁ!? 何言ってんのよ。X785年に決まってんでしょ!?」



あぁ、やっぱりそうか。



あの時、手遅れだったんだ。






今のルーシィは、“ルーシィ”じゃ




ない。





 


「やはり……記憶喪失だそうだ……」


エルザはらしくもなく、少ししゅんと詩ながら告げる。

あれから、ルーシィの身体を心配して、病院に連れて行き検査をしてもらった。

栄養状態に異常はなかったが、やはり記憶は無くなっていて。

もう一生、記憶は戻らないかもしれないかもと言われた。


「ルーシィ、大丈夫か?」

「ええ、ありがとうございます。エルザさん」


「エルザさん」と呼ばれ、エルザの顔が曇る。

エルザだけではない。

俺も、ナツも、ハッピーもだ。


ルーシィが失った記憶は、全てではない。

妖精の尻尾に来た、X786年からの記憶が無くなっていた。

つまり、俺たちに出会ってからの記憶が無い。

俺たちとの思い出は、全て、消え去ってしまったのだ。


もう、見ることも出来ないのか?



『グレイ!』



そうやって嬉しそうに俺の名を呼ぶ、ルーシィを。



それから、ルーシィと俺たちは妖精の尻尾に戻った。

ギルドのみんなは、ルーシィのおびえた様子に悲しみ、レビィに至っては泣いていた。


「ルーシィ、安心しろよ。みんな仲間だ」

「……はい……」


俺がそう言うと、ルーシィは少し緊張を解き、微笑んだ。


「仲間って……いいですね……」

「あぁ、そうだな」

「あたしは、ずっと1人だったから……」

「……」


ルーシィの言葉に無言になる。

そういえばルーシィは、親父さんとうまくいってなかったな、と思い出す。

つまり“このルーシィ”は、広い屋敷でいつも1人で居て、寂しくて。


愛に飢えていてた、ルーシィ。



「でも、俺たちがいる。一生な」

「ありがとうございます。グレイさん」

「んとそれから、これからは敬語使うな。さん付けも禁止」

「わかり……わかったわ、グレイ」


グレイと言われ、嬉しさのあまりグラリと倒れそうになる。

そんな愉快な(?)俺に、ルーシィは初めて笑った。


あぁ、また笑顔が見られた。


記憶が無いといっても、ルーシィはルーシィなのか。

数日前、俺に別れを告げる前に見たルーシィの笑顔がパッと蘇る。


そういえば、なぜルーシィは俺に別れを告げだのだろうか。

なぜルーシィは、記憶を失わせられたのか。


あの場にいた男たちは、雇われの魔導師で、詳しくは知らないらしい。

様々な疑問が残るが、その真実を知るルーシィは、もう何も知らない。




ーto be continuedー




 
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