story

□君の声を、聞きたくて。
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「ルーシィ姉さん、そろそろ戻らないと」
「そうねウェンディ。戻りましょ」


ルーシィは名残惜しそうに、海面に潜った。

さっきまでの彼女の目線の先には、青年の姿。


彼の名は、ロキ。
この国の王子である。


そして、ルーシィは彼に恋をしていた。






それは、一瞬の出来事だった。


毎日毎日繰り返される、同じような日々。

それに嫌気がさしたルーシィは、城を飛び出した。

すると、いつの間にか浅瀬まで来てしまっていた。


(ここ…どうしよう…)


人魚は人間に見られてはいけない。

これは絶対。

ルーシィの頭の中で、掟がぐるぐると駆け巡る。

帰ろうとした、その時。


ルーシィの瞳に、1人の青年が映った。



ーーードキン…。



その刹那、ルーシィの胸が高鳴る。

青年ーーロキは、砂浜へ来ると1人で立っている。


ロキは、海を見に来ていた。

彼は海が大好きなのだ。


ルーシィはそんな彼の姿に、帰ることも忘れ、見とれていた。


(何?この気持ち…)


ルーシィには、初めての感覚。

彼を見ると、身体中が熱くなり、心臓がうるさくなる。


それが「恋」だと気づいた時から、彼女は毎日のように、ウェンディを連れてロキを見に来ていた。






「あ!今日は船にいるわ!」


今日はパーティーなのか、豪華船に人々は集まり、なにやら騒いでいる。

その中に、ロキは居た。


「でも、大丈夫でしょうか…?波、高くなりそうですし…」
「そうね…」


確かに、嵐が近い気配がする。

船が転覆しないかしら…?と、ルーシィは不安になった。


そして、その不安が的中した。






「キャーーーーッ!!」


悲鳴が響き渡る。

そして、だんだん船が傾いていく。


「ルーシィ姉さん!逃げましょう!危ないです!」
「で、でも…」


あの船にはロキがいる。


このまま放っておいたら…………!


何も考えないで、ルーシィは船の方へ向かった。


「ルーシィ姉さん!」


その時、船から落ちるオレンジ色の髪。


「うわっ!」


ロキは命の危険を感じ、目をつぶった。




ザブーン……………




 
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