ナギ 2

□My heart is …
1ページ/4ページ




「シンさん、次は何をしますか?」


「そうだな…この本を棚に戻してくれ。」


「分かりました。」



机の上に高く積まれていた本を持ち上げると、本棚に一冊ずつ戻していった。


綺麗好きのシンさんの為に航海室を掃除をするのは私の日課で


棚のどこにどの本を戻せば良いかと言うのも、すっかり覚えていた。



「あれっ?んっ、と…」



一番上の段に本を戻そうとしたんだけど、棚が高くて届かない。



(んー!あと少しー!!)



私が精一杯背伸びをして本を戻そうとしていると


いつの間にか後ろに立っていたシンさんが、私の手から本を取り上げストンと本を棚に戻してくれた。



「シンさん、ありがとうございます。」


「これじゃ、お前に頼んだ意味が無いだろう。」


「ス、スイマセン…」


「仕方無い、貸せ。」



シンさんは呆れたようにため息を吐きながらも、次々と本を棚に戻していく。


その時、ドアが開く音がして目を向けると


ナギがこっちを睨むようにして何も言わずに立っていた。



「ナギ。」



(シンさんに、何か用事かな?)



それにしては、入り口の所に立ったまま部屋の中に入って来ない。



「ナギ…?」



不思議に思って、もう一度声をかけると


ナギは何も言わずにドアを閉めて行ってしまった。



「シンさん。ナギ、何か変じゃ無かったですか?」


「ああ…」



シンさんがふっと小さく笑った。



「大方、俺達を見て変な誤解をしたんだろう。」


「誤解?何の誤解ですか?」


「ったく…お前はこの状況を何とも思わないのか?」



えっと…シンさんの言ってる意味がよく分からないんだけど。



「この状況って、どう言う意味です?」



そう聞きながらシンさんの方へと身体の向きを変えると


私のすぐ目の前にシンさんがいて、その手は私の両肩の辺りで本棚に添えられていた。


シンさんの腕の中にすっぽり入っている私は、まるでシンさんに本棚に押し付けられているみたいだった。



「シンさん、近いです!何でこんなに近いんですか!?」



(ま、まさか!)



ナギはこの態勢を見て、私がシンさんに抱きしめられてると思ったんじゃ…



「どうしよう…」



そう呟くと、シンさんが私の顎を掴みぐいっと上を向かせた。



「くくっ。もうナギに見られてしまったんだ。既成事実でも作っておくか?」


「なっ!」



シンさんの綺麗に整った顔が目の前にあって、その息が唇をくすぐる。


私は、自分の頬に一気に熱が集まるのが分かった。



「何を馬鹿な事を言ってるんですか!?もう、どいて下さいっ!」



私はシンさんを押し退けると、バタバタと部屋を飛び出しナギを追いかけた。






 

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ