ナギ 2

□確かに恋だった
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満月の夜。船上の宴。


目の前には、海賊だと言う6人の男性。


船長と呼ばれていた人が私に向かって聞いてきた。



「お前は誰の部屋を選ぶ?」



そう言われて、何も迷わずソウシさんを選んだ。


ソウシさんは、優しくて、穏やかで、とても海賊には見えない。


そう、まるでお兄ちゃんみたいな感じ。


だけど、他にいたのは


酒場で助けてくれたのに私を覚えてもいないハヤテさん。


すぐに「海の藻屑にする」とか「鮫の餌にする」とか言うシンさん。


何だか女ったらしで軽そうな船長。


無口で無愛想で威圧感のあるナギさん。


トワくんは歳も近いし良いかなって思ったけど、ちゃんとした部屋を割り当てられてないのに


私までお邪魔したら何だか可哀想だなって思ったからやめた。



「じゃあ、ヒロインちゃん。部屋に行こうか。」



ソウシさんの柔らかい笑顔に、強ばっていた身体も心もゆっくりと緩んでいく感じがする。



(やっぱり。ソウシさんで正解だったな。)



「今日はもう疲れただろうから、船内は明日案内するね。」


「あ、はい。ありがとうございます。」



そう言った私を見て、またソウシさんがふわりと笑った。



(そう言えば…)



船の中に入るドアの前で甲板を振り返ると


空になったお皿を片付けているナギさんの姿が目に入った。



何でナギさんは、私が頭を打った事に気付いたんだろう…?



皆がお酒を飲んで騒いでいる中で、一人黙々と片付けをするナギさんから視線がそらせない。



(どうして…?)



「ヒロインちゃん?どうしたの?」


「あ、すいません!」



突然立ち止まった私を不思議に思ったソウシさんに声をかけられて、慌てて駆け寄った。



(明日から頑張らなきゃ。)



部屋に向かうソウシさんの後について歩きながら


何故か、樽の中から見上げたナギさんの瞳を思い出していた。







 


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