ナギ 2
□ずっと このまま
1ページ/2ページ
ヒロイン side
「ナギさんの馬鹿…」
私は小さく呟くと、カクテルの入ったグラスをギュッと握った。
今、私達は街の酒場に来ている。
美形揃いのシリウスのメンバーは、お店に入るなり綺麗に着飾ったお姉さま方に囲まれてしまった。
そうなると当然私は邪魔者で…
私は独りテーブルの隅で小さくなって座っていた。
チラッと隣を見ると、ナギさんの両脇にも大きく胸元の開いたドレスを着たお姉様が座っていて
ベタベタとナギさんの身体や腕に触っては、はしゃいだ声をあげて笑っている。
ナギさんは相変わらずの仏頂面で、お姉様方が話しかけても特に返事をする事も無いけど
その手を払う事も無く、ただ座っていた。
(はぁ…帰りたい…)
お店に入る前に、ナギさんから私はナギさんの隣に座るように言われていた。
酔っ払いに絡まれない為だ、と言っていたけど
ナギさんに片想いをしている私としては、それでも舞い上がりそうなほど嬉しかったのに。
「本当、お兄さんって私の好み♪クールな目が素敵ね!」
そう言って一人のお姉さんが、その大きな胸をナギさんに押し付けるようにぐっと身体を寄せた。
(ああぁぁー!近い!近すぎー!!)
ナギさんがチラリと目を向けると、その女の人は目を反らすどころか
唇に笑みを浮かべて、ナギさんの瞳を熱っぽく覗き込んだ。
二人の視線が甘く絡み合っている、ように私には見えた。
ナギさんに触らないで!
そんなイヤらしい目で見つめないで!
私は心の中で叫んでいた。
だけど…
「おっ!ナギ、早速お持ち帰りすんのか!?」
(せ、船長ーー!!!)
船長がゲラゲラと大声で笑いながら言うと、ナギさんは黙ってグラスに口をつけただけだった。
(ナギさん、否定しないんだ。)
私には、何も言える訳ない。
だって、私はナギさんの彼女でも何でも無い。
同じ船に乗ってる仲間でしかないんだもん。
(もぅ、ヤダ…泣きたい。)
ナギさん、胸が痛いよ…
私は涙が溢れないように、キュッと唇を噛み締めた。
「もー!飲んでやるー!!」
目の前の現実から逃げたくて、私はグラスの中身を一気にあおった。