ナギ 2

□あの空のように
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森の中にいる時のナギの雰囲気を、何て表したら良いんだろう。



少し切なげで



だけど何かを懐かしむような



やっぱり、此処に来ると色んな事を思い出すんだろうな。



そんなナギの横顔を見て、私はただ綺麗だなと思う。


男の人に言うのはおかしいのかもしれないけど、それが正直な気持ちだった。



私の視線に気付いたのか、ナギが私の方を振り返る。


ずっとナギの事見ていたのに気付かれたのかな?


何だか照れ臭くって、私は小さく笑った。



ナギが、眩しそうに目を細めて私をじっと見つめて来た。



「ナギ?」



ふっと表情を緩めて、ナギがゆっくりと私の髪を撫でる。



ねぇ、ナギは知らないでしょ?



いつもと違う顔をナギが見せる度



私はナギに恋にしてるって。




「……食材も結構集まったし、少し休憩するか。」


「うん!」



木陰に入り水を飲むと、さっきまでの疲れがすうっと消えて行った。



「はぁー、森の中って気持ち良いね。」



確かに疲れてはいるんだけど、普段船の上で働いてる時とは何かが違う。


森が疲れを癒してくれてる、そんな感じだった。



「私が育ったヤマトはね、結構森林の多い地域なの。だからなのかな。木の側にいるとほっとするの。」


「そうか。」



そう言って、ナギが柔らかく笑う。


私がそう感じるぐらいだから、ナギはきっと沢山の思いを抱えているんだろうな。


その証拠に、ナギは森の中にいる時、船の上では絶対に見せないような表情を見せる。


それは小さくてほんの一瞬の事なんだけど、私には何となく感じるんだ。



その度に、強く思い出す。



ナギにもっと近付きたいとそう思った、あの日の気持ちを。



それは、まるでもう一度ナギと恋に落ちたような、そんな感覚だった。




「本当…気持ち良い。」




空を仰いで、ゆっくりと目を閉じる。



瞼の裏に、ナギの事が好きで、好きで


苦しいぐらいに恋をしていたあの日の自分が浮かぶ。



今もナギを想う気持ちは何も変わらないけど


ナギが過去の話をあまりしてくれない事を、あの時みたいに寂しいだなんて思わなくなった。



ナギが言いたく無い事は別に無理に聞きたいと思わないし


例え、今私が知ってる事がナギの中のほんの一部だけなんだとしても


あれから二人で過ごした時間の中で重ねてきた大切な物は


ちゃんと、全部この胸の中にあるから…




ゆっくりと目を開くと、どこまでも澄んだ空が広がっていた。



ナギは、いつだって見上げればそこにいて



喜びも、悲しみも、私の全てを包み込んでくれる





大きくて広い、あの青い空のように







end








 


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