ハヤテ

□sweet impact!
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それは、突然私の目に飛び込んできて、私の心を掴んでしまった。



(綺麗…)



手のひらサイズの瓶に入ったジェリービーンズ。



「ヒロイン。お前、こんなん欲しいの?」


「うん。」


「仕方ねーな。オヤジ、これ、ひとつ。」



ハヤテは、ジェリービーンズを買って、私の手にのせてくれた。



「ハヤテ、ありがとう!」


「おう。さっさと船長に頼まれた用事済ませっぞ!」



私の手を握り、ハヤテは走り出した。





*******



「はぁー、やっと終わったなー。休憩しようぜ。」



船長に頼まれていた用事が終わった私とハヤテは、休憩をする為に公園の芝生に腰を下ろした。



「あ、さっきハヤテに買ってもらったジェリービーンズ食べようかな。」



瓶を傾けると、手のひらの上でカラフルなジェリービーンズの粒がキラキラと光りながら転がる。


その一粒を摘まみ、口に運ぼうとした時



「それ、もーらいっ!」



ハヤテが私の手を自分の方に引き寄せ、私の指から直接ジェリービーンズをパクリと食べた。


私の指先に、ハヤテの柔らかい唇が触れて心臓が跳ね上がる。



「うまーっ!」



ハヤテの唇が触れたところが妙に熱くて、思わず手をギュッと握りしめた。



「はー、良い天気。俺、水浴びしょっかなー。」


「水浴び?」


「おう!」



ハヤテは水飲み場に行くと前屈みになり、後頭部から水を被る。



「うーっ。気持ちー!」



まるで犬みたいに頭をブンブンと振ったハヤテの周りに、水しぶきがキラキラと飛び散る。



(わ…綺麗。)



その瞬間、私の中で何かが甘く弾けた。


どこまでも晴れ渡った青い空。


濡れた金色の髪が、太陽の光を受けて煌めいている。


ハヤテの周りを取り囲む世界は、いつだって色鮮やかでキラキラと輝いていて



(ハヤテ、格好良いな…)



私の心を、どこか遠くまで拐って行ってしまう。


簡単で分かりやすく言うと、私はハヤテに見惚れてしまっていた。完全に。



「…い、おーい、ヒロイン?」


ハッと我に返ると、いつの間にかハヤテが私の前にしゃがみ込み、目の前でぶんぶんと手をふっていた。



「何、ぼーっとしてんだよ。あ、さてはお前、俺に見惚れてたんじゃね?」


「ななな、何を急に!」


「お前、めちゃ真っ赤じゃん!図星なんだろー!」



自分でも、顔が真っ赤になっているのが分かった。


ハヤテは大声で笑いながら、そんな私の頭をガシガシと撫でる。



(うぅぅ、恥ずかしすぎる。)



「可愛いじゃん、ヒロイン。」


「えっ?」



不意にハヤテが私の唇にキスをする。


それは、さっき食べたジェリービーンズの味がする、いつもよりも甘酸っぱいキスで…キュッと胸が締め付けられる。



「船に帰るか!」



ハヤテが私の手を取り、船に向かって歩き出す。


こうして手を繋ぐようになってから随分経つけど、今もドキドキするし、なんだかくすぐったい気持ちになる。



(やっぱりハヤテに恋してるんだなぁ。)



毎日のふとした瞬間に、今も変わらず私がハヤテから受けるのは



(悔しいから、絶対に言わないけどね。)



ハートが弾けるような、甘い衝撃。





end










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