シン
□イエス
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肌を合わせ、二人の吐息が重なる
決して許されない
痺れるほどの甘い罪
お前が俺の手を握り
そのまま二人は堕ちていく…
言葉になどしなくても
抱き合えば伝わると思っていた
(…愛している)
だけど
それは俺の思い込みで
お前は、あの部屋に帰っていく…
*******
「私、彼と一緒に行くから…」
お前が最後に見せた
痛々しい笑顔が瞼に浮かぶ
「…シンさん、さようなら。」
お前の流した涙が
床に落ちて砕け散る
今なら間に合うのだろうか
手を差し出せば
俺の手を取ってくれるのだろうか
(…行くな。)
だけど
俺は何も言えないまま
ただ、お前の後ろ姿を眺めるしか無かった
*******
航海室の窓に雨が叩きつける
まるで俺の代わりに空が泣いているようで
目が離せない
なぜ、たった一言が言えなかったのだろう
そっと目を閉じ、お前の影に想いを馳せる
(…心からお前を愛している。)
どれだけ強く想っても
今はもう
決してお前には届かない…
end