シン

□イエス
1ページ/1ページ




肌を合わせ、二人の吐息が重なる


決して許されない


痺れるほどの甘い罪



お前が俺の手を握り


そのまま二人は堕ちていく…





言葉になどしなくても


抱き合えば伝わると思っていた



(…愛している)



だけど


それは俺の思い込みで


お前は、あの部屋に帰っていく…




*******



「私、彼と一緒に行くから…」



お前が最後に見せた


痛々しい笑顔が瞼に浮かぶ



「…シンさん、さようなら。」



お前の流した涙が


床に落ちて砕け散る




今なら間に合うのだろうか


手を差し出せば


俺の手を取ってくれるのだろうか



(…行くな。)



だけど


俺は何も言えないまま


ただ、お前の後ろ姿を眺めるしか無かった




*******



航海室の窓に雨が叩きつける


まるで俺の代わりに空が泣いているようで


目が離せない



なぜ、たった一言が言えなかったのだろう


そっと目を閉じ、お前の影に想いを馳せる



(…心からお前を愛している。)



どれだけ強く想っても


今はもう


決してお前には届かない…







end










[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ