ナギ 2

□ずっと このまま
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ナギside



「うぅー…」



隣を見ると、ヒロインが赤い顔をしてテーブルに突っ伏している。



「チッ…」



酒に弱いくせに飲み過ぎだ。


無防備な姿を見せんなってあれだけ言ったのに、全く聞いてねぇな。



「おーい、ヒロインー?起きてっか?」



グラスを片手にしたハヤテがヒロインの顔を覗きこんで、頬をつついている。



おい、ハヤテ!


気安く触るんじゃねぇよ!



「んー、ハヤテさん?」



ヒロインが酔ってとろんとした目をハヤテに向けた。


頬が赤く染まり潤んだ目をしたヒロインは、いつもより妙に女っぽく見えて何だか落ち着かねぇ。




「ねぇ、今夜は二人で一緒に過ごさない?」



さっきから、やたらベタベタと触って来ていた女が耳元で囁く。


俺の膝に置かれていた女の手が、ゆっくりと足を撫で上げてくる。




「……行くぞ。」



そう言うと、女の顔がパアッと明るくなり、俺の腕に手を絡めてきた。



「お前じゃねぇ……ヒロイン!」


「は、はいっ?」



巻き付いていた女の腕を振り払い立ち上がると、ぽけっと俺を見上げているヒロインの手を掴んだ。



「ナ、ナギしゃん!?」


「えっ?ナギ兄!?」



呆気にとられた皆を尻目に、そのまま強引にヒロインを店の外に連れ出した。








「ナギさん!どうしたんれすか?」


「お前、飲み過ぎんなって言ったろ!何考えてんだ!?」


「だって…だって…」



ヒロインの目に、あっと言う間に涙がたまっていく。



「ナギさんが隣に居ろって、お姉さんと見つめあってるし!私が一人で飲んでるのにお持ち帰りだしー!」



ヒロインが半泣きで意味の分からねぇ事を捲し立てる。



(…酔っ払いが。)



よく分かんねぇけど、構って欲しかったって事か?


ヒロインの頭をポンッと撫でた。



「放っておいて悪かった。」


「ぐすっ、ナギさん…」


「あそこは船長のお気に入りの店だからな。無愛想にも出来ねぇだろ。」


「ナギさん……あれで愛想良くしてたんですか?」


「うっせぇ…」



お前以外の女にベタベタされて、あそこまで我慢しただけマシだろ。



ヒロインが、涙をぐいっと拭いた。



「私こそスイマセン…飲み過ぎちゃって。」


「…ほら、乗れよ。」



俺は、しゃがむと背中をヒロインに向けた。



「えっ!?ナ、ナギさん?」


「お前、そんだけ酔ってちゃ歩けねぇだろ。乗れ。」


「で、でも。」


「早くしろ。」


「…ありがとうございます。」



ヒロインが呟くと、背中にふわっとその重みが加わった。



「ナギさん、重く無いですか?」


「別に。」


「今さらですけど、あの女の人と一緒に行かなくて良かったんですか?」


「…俺が店から連れ出したのは、お前だ。」



黙り込んだヒロインが、ギュッとしがみついてくる。



「…ナギさんの背中、あったかいです。」



小さく呟いたヒロインの声が、夜の空気に溶けていく。




ヒロインの触れてる背中が熱い。





「ナ、ギさん…」


「あっ?」


「……」



(寝言かよ。)



「…ナギさん…」



耳元で、何度もヒロインが俺の名前を呼び


その声に胸が締め付けられる。






背中にヒロインの温もりを感じながら夜の街を一人歩く。


見上げた夜空には星が瞬いている。




いつまでも、こんな時間が続けば良いと


柄にも無く、そう思っていた。





end










 

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