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□甘いお返し。
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・蘭丸が南沢と同じ高校に入った後の話
・二人は付き合ってます







授業が終わり俺はいつものように南沢先輩と部活に行くため2年の教室を訪れた。

「....?」

何やら廊下で女子がキャアキャアと騒いでいる。

その中心には南沢。


あの人..何やって...


よく見ると南沢は女子に何か袋のような物を手渡している。


女子の集団が散っていったのを見計らって俺が近付くと南沢先輩は俺を見つけ嬉しそうな顔をする。

さっきまで女子と楽しそうにしてたくせに。

「霧野」

「先輩..何してたんですか?」

「何ってホワイトデーのお返しだよ」

「アンタって人は..バレンタインに全部貰ってたんですね?」

コイツ最低だ。

俺は女子全員に断ってたのに。

「可哀相だろ断ったら」

「だからって..付き合ってる俺がいるのに」


俺が目を逸らして言うと先輩は微笑する。


「お前って一途だよな。そうゆうとこが可愛いんだよ、蘭丸」


先輩はズルい、
こうゆうときだけ下の名前で呼んでくる。

なんか...ムカつく。


「エロみさわ..」

「エロっ!?」

「このッ..エロみ沢ナル志!!!」

「おい!まてよ!」


俺は先輩に背を向けて学校を出る。


恥ずかしい..

女に嫉妬していじけるなんて、
しかも泣くなんて..


気付くと河川敷にいた。
土手を歩いていると前からガラの悪そうな男子高生が3人歩いてくるのが見える。

特に気にせず横を通り過ぎようとすると突然腕を捕まれた。


「お前..男?」

「女の子みたいに可愛いじゃん」

「ねぇ少し遊んでくれない?ピンクちゃん」


男達は口々に言う。

男の俺を捕まえて何が楽しいんだか...

「.....」

「あれ?泣いてたの?俺達が慰めてあげようか」

「...怪我したくなかったら消えてくれ」

「あぁ!!?可愛い顔してるからってそんなこと言っていいと思ってんの!?」

「.....」


物分かりのない奴ら..

俺はいつものようにサッカーで鍛えた丈夫な足で蹴ろうとした。

「っ!!!!?」

だが泣いていたせいか、思うように足に力が入らない。


「なんだよ、やっぱ女なんじゃねぇのか?」

男はハッと馬鹿にしたように笑い俺の足を狙って蹴ろうとする。

「っ!」

手足は押さえられているし、もう駄目だと目をつぶる。


「うぐっ..!」


だが響き渡ったのは男の呻き声。
目を開けると男は俺の足元に倒れていた。

一つのサッカーボールと共に...


「なんてことしやがるテメェ!!」

「ぶっ殺すぞ!!?」


他の男2人はサッカーボールを蹴った人物に罵声を浴びせる。


「そりゃこっちの台詞だ」


罵声を浴びせられた南沢先輩は庇うように俺を自分の後ろに立たせる。


「俺の霧野に何してんだよ。ぶち殺すぞ」


いままでにこんなに怒った南沢先輩を見たことがあっただろうか。

顔は見えないが、男2人の強張った顔を見るに物凄い顔をしているのだろう。

「くっそ..」

「何もんだよさっきのシュート」

男2人は南沢のオーラに負けたのか、倒れていた男を担いで逃げていく。


俺は南沢先輩のブレザーの裾を無意識に掴んでいた。

「怖かったのか..?お前らしくないな」

「先輩のせいですよ」

「悪かった..」

「本当にそう思ってるんですか?」

「あぁ、俺はお前が一番..いや、お前だけが大切なんだ」


先輩は真っすぐに俺を見る。
その瞳がいつも以上にかっこよく見えてドキドキしてしまう。


「そういえば..よく俺の居場所がわかりましたね」

「わかるさ..ここは俺がお前に告った場所だもんな」
「先輩...//」


なんでこの人はこんなに男前なんだろう。


「蘭丸」


俺は改めて名前を呼ばれて河川敷の方向から先輩の方へ顔を向ける。


「なんです..んむ!?」


その瞬間、唇に唇を重ねられる。
つまりキスされた。

「ん..んむ..ふッ///」


いきなりの行動に驚く暇もなく、口の中に生暖かい南沢の舌が入ってくる。


「んッ...ふぅ..はぁッ//」


南沢が口を離すとお互いの間に唾液の橋が出来る。


「は..はぁ..甘..い///」

「だろ?」

「チョコの味がした..」

「これがホワイトデーのお返しだ、お前が一番欲しかったもんだろ?」

「なっ/////」


俺が顔を真っ赤にすると優しく頭を撫でられる。


「愛してるよ、蘭丸」


そして今度は額にキスをしてくる。


「俺も...篤志」





この後、部活に戻ってキャプテンに怒られたのは言うまでもない。

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