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□霧のなかの蛇
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「倉間、練習に付き合ってくれないか?」

「いいけど..」


練習が終わると霧野が声をかけてきた。
こいつと自主練なんて久しぶりだな...


みんなが帰って静かになったグラウンドに二人の声が響く。


「サイドワインダー!!」

「ザ・ミスト..!」


シュートブロックの練習とゆうことで、倉間がシュートを打ち霧野がパワーを弱める練習の繰り返し。

「ふぅ、疲れたー」

「そろそろ終わりにするか..付き合わせちゃって悪かったな」

「俺もシュート練習出来たし、助かったぜ」


二人は更衣室に戻る。


「あれ..?」

すると倉間が何かを探し始める。

「どうした?」

「俺のバックがない..」

「バック..?もしかしてアレじゃないか?」


霧野が指差す先にはロッカーの上に乗った倉間のバック。

「何であんなとこに..」

「浜野らへんが怪しいな」

「ったく..後でシめる」

倉間はバックに手を伸ばすが..

「よっ....とれ..な..い」

手が届かない。

それを見ていた霧野が笑いをこらえながら声をかける。

「クス、とってやろうか?」

「じっ自分でとれるつーの!!////」

バカにされたのが悔しかったのか、倉間は椅子を持ってきて、その上に乗る。


「なぁ、その椅子バランス悪くないか?」

「大丈夫だって!よっと、ほら取れた!」

「気をつけて降りろよ?」

「わかってるって!流石に落ちな..うわっ!!」

「危な..わっ!?」

倉間はバランスを崩し霧野の方向に落ちる。

「いって..だから気をつけろっ..て?」

霧野は気付く、
自分の声がいつもと違うことに。

そしてもう一人の自分がいることに。


「よかったー!まだ部室空いてた!」

その時、ドアが乱暴に開き浜野が入ってくる。

「ん?まだ居たの?」

「浜野..」

「忘れものしちゃって..ちゅーか倉間、バック取れた?椅子使わなきゃ取れないよなぁW」


浜野は霧野に向かって『倉間』と呼ぶ。


「違うんだ..俺、霧野だ」

「何言ってんの?どっからどうみても倉間じゃん..あ、もしかして悪戯した仕返しに俺を騙そうとしてんの?」

「違う..入れ代わったんだ!」

「え..?」

すると倒れていた倉間が起き上がる。

「いてて..霧野、わり..ってアレ?何で俺が居んの!?」

その様子を見て浜野は顔をひきつらせる。

「マジか...」






部室内、倉間と霧野を前にして2年メンバーが集まった。


「いきなり呼び出したかと思えば...まさかこんなことになっていたとは」

「この前は松風と剣城が入れ代わってたし..最近、おかしいな」

「まっこと愉快ぜよW」

「お前は気楽すぎだ..」

「どどどっどうしましょう..」

神童を始めとして、一乃、錦、青山、速水も口々に言う。

「取りあえず、意見を出し合ってみるしかないっしょ」



浜野の言葉で最初に手を上げたのは神童。

「ぶつかったら入れ代わったと言ったな?
だとしたらもう一回ぶつかれば戻るんじゃないか?」

「なるほど..!」

「はいじゃあ、もっかいぶつかってくださーい」


倉間と霧野はもう一回ぶつかってみる。

が戻らない

「戻んねぇじゃねぇか..」


次に手を上げたのは錦。

「そのうち戻りよる!」

「だからお前は気楽すぎなんだよ!!!」


次に手を上げたのは一乃。

「そういえば..松風達がキスをしたら戻ったって言ってたような」

「キッ...!?//」

「なんでお前が赤くなるんだ、神童」

「はいじゃあやってみましょう!」


霧野はすぐに倉間の肩を掴む。

「キキキッキス!?なんでキス!!?///」

倉間は顔を真っ赤にして焦る。

「知るか、早く戻りたいなら大人しくしろよ」

「ちょっ待て!まだ心の準..んむ!!」


霧野は倉間を押さえ付けキスをする。


「霧野ったら男前W」

「霧野と倉間が..//」

「てゆうか戻ったんですかね?」


霧野は倉間を離し確認する、
が目の前にはさっきと変わらず自分の顔。

「戻ってねぇじゃねぇか!!!!//////」

イラつく倉間を見て青山が口を開く。

「もしかしたら普通のキスじゃ駄目なのかも..」

「ディープとか?」

「ディ...!!!?////」

「ディープとはなんだ?」

「神童は純粋すぎるよ」

「ちゅーことでハイやっちゃって♪」

「やっちゃってじゃねぇ!流石に..は、恥ずかし...///」

「別にいいだろ」

「何でお前は平気なんだよ!」

「恥ずかしがる神童の顔が見たいから」


霧野はドヤ顔で言う。


「こいつマジ馬鹿だ」


すると油断する倉間にスキあり!と霧野がまたキスをする。


「むぅーーッ!!///」

倉間は必死にもがくが霧野はそんなのお構いなしに舌を入れていく。

そんな二人を他の面々はガン見、

ただ一人だけ顔を真っ赤にしているのだが..


「あっあれが..その、ディープキスとゆうものなのか////」

「あっはっは!神童はお子様ぜよ!」

「いいねぇいいねぇ」

「なんか..長いですよね」

「霧野、完全に楽しんでるW」

「これで戻らなかったら笑えるよな」

「まさか..W」


そのまさか

霧野が倉間を離しても何の変化もなかった。


「うわぁあああああああああああ!!!!////」

「泣くなよ倉間W」

「もう死ねる!つかよく自分の顔にキスできるよなお前は!」

「可愛いからな」

「お前はどっかのナルシ沢か!!」




その日、何をやっても戻ることはなく二人して神童の家に泊まることになった。


翌日


「戻ってたぁあぁ!!?」

部室に浜野の声が響く。

「あぁ、朝起きたら戻ってた」

倉間はというと、隅っこで泣いていた。

「昨日の苦労は一体...グス///」

「でっでも面白いものが見れましたし..神童君も学習しましたし」

「だーから言うたぜよ」

錦は頬を膨らまし、昨日さんざん自分の事を馬鹿にしていた青山をチラ見する。

「悪いって;」


皆が騒いでる中、一乃は体育座りで落ち込んでいる倉間に近づく。

「倉間さ..」

「なんだよ..」

「お前..霧野のこと好きだろ?」

「はぁ..!?////」


一乃が倉間の耳元で囁くと倉間は顔を真っ赤にする。


「図星?」

倉間は「うー」と何かの唸り声をあげて自分の腕に顔を埋める。


正直言って霧野とあんなこと出来て少し嬉しかった。

そうなの..かもな


俺、霧野が好きだ

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