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□Re/Men/Ber
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「剣城!!」

ベンチに座っている少年に声をかける。彼が皆のように自分の事を覚えていないと知りながら。

「お前誰だ..?」

予想通りの返事、
それでも天馬は笑顔を崩さずいつもの様に話し掛ける。

「剣城ったら何言ってるの?天馬、松風天馬だよ」
「知らねぇよ」
「ねぇ、練習しようよ!」
「は?何のだよ、つか人の話聞け」
「何ってサッカー」
「サッカー?知るかそんなもん、くだらねぇ」

「はいパス!」

天馬は話を聞かず手に抱えていたボールを剣城にパスする。
だが剣城はサッカーなど知るはずがなく、ボールはただ宙に浮き地面に落ちるだけ。

「何やってんだ?」

剣城は変な目で見るが天馬は諦めずまたボールを拾う。

「剣城、ほら!デスソードやって!」
「は..?」

また地面に落ち、また拾う。

「ほらデスドロップ!」
「いや..何やって」

また拾う

「今度は..デビルバースト!」
「おい聞けって」
「今度は..今度は..ランスロット出して...ロストエンジェル..」

すでに天馬の声は震えて聞き取りずらい。
すると持っていたボールに水滴がポタポタと落ちる。


あれ..?
なんでだろ
泣かないって決めてたのに..
涙が止まらないよ..


「剣城..一緒にッ..ファイアトルネードDDやろうよ..」
「さっきから意味わかんねぇよ!さっさと俺の前から失せろ、うぜぇんだよ..」

剣城は面倒臭さそうに背を向ける。

「わかった..ごめん剣城」
「....」
「でも最後に言わせて..?」「..なんだ」

「剣城が元に戻ったら俺の気持ちを伝えるね」
「は..?」
「それと..」

天馬は剣城に背を向け何かを決心したような強い目をして口を開く。


「絶対..取り戻すから、それまで待ってて」


その瞬間、強い風が吹く。剣城は言葉の意味が分からず風に絶え天馬の方向を向くが、既に天馬の姿は何処にも見当たらない。
残ったのは天馬が持っていたサッカーボールだけ。

「何だったんだよ..」


剣城はそれを拾う。

「あ...?」

そしてすぐに気付く、
頬を伝う暖かい液体に。

俺...泣いてるのか?

拭っても拭っても涙が溢れてくる。だが本人にはその理由がわからない。

どうしちまったんだ..俺は..?

ただわかるのは


さっきの少年を懐かしく感じること。

「松風天馬..」

フと頭に浮かんだ名前を口に出してみる。

何処かで会ったか..?

記憶をたどる





「やっぱり覚えてねぇ..」
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