未来予想図A

□未来予想図A-4
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リンが病院に連れていこうと言い出した


それが妥当だ


けど、この状況じゃそれすら難しい


九尾の妖狐は咆哮し、建物は瓦礫となっていく


そんな道をこの人を背負って走るのは難しかった



「行こう」



行くか、行かないかで言い争ったリンとオビトはその後静かだった


オレがあの人を背負って、両端を二人が走った


この人が指を指した



ーーー狐の元に



きっと、あそこに先生がいるんだ



「後少しですよ」



寝てしまわないように声をかける



「...っぅ...ん」



帰ってくるのは言葉ではない


けれど、それがこの人の生きている証とも言えた



「あんたも報われないね」



オレが小さな声で言ってみた


また、声を溢す


走る度に、揺れる度にポタポタと溢れていく紅


まるで死のタイムリミットを突きつけているようだった


紅く染まる手の感覚が鮮明にわかる



「...いいの」



「え?」



びっくりするくらいハッキリした声だった



「報われない、なんて思ってないよ...」



それでも聞こえるか、聞こえないか位の小さな声だけど


息を吸う苦しそうな呼吸音も聞こえた



「明紀は...ね...」



彼女は夢の中で、話しているつもりなのかもしれない



「、みんなで...笑って、過ごせればそれでいい、ね」



いつもはしない無防備な話し方


この人が自分で名を呼ぶときは余裕がないとき




残酷なほどに優しい人




「着きましたよ」




何処までも清らかな人だ




「ミナト...、来ちゃダメ」




ドン



「クシナッ!!」



オレ達はまだまだ弱い


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