のーまるらぶss
□雨の花
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大きな木は十分に追い茂り魔鈴の身体を雨から守ってくれたが、あまりに酷い雨は彼女から視界を奪う。
魔鈴は自分が水槽の中にいるような気持ちになった。
(しかしこれじゃ走っても歩いても同じだね…)
木の幹に背を寄せ持たれかかり仮面の下の目を閉じた。
(子供の頃…
アイオリアはこんな雨でも鍛錬してたね…)
逆賊の弟として虐げられたアイオリアの幼い頃…。
彼の鍛錬に付き合う者などわずかしかなかった。
アイオリアは闘技場に人が少ない雨の日には必ず鍛錬していた。
自分も付き合う事もあったが、所詮力の差がありすぎる。
彼の鍛錬の相手としては力不足だった。
ただ見ているしかなかった。
見ているだけしか…。
でも、それでも、アイオリアはアテナの黄金聖闘士レオのアイオリアとして懸命に努力していた。
アイオリアの闘技を見るのが好きだっただけ。
それだけだったのに…。
いつの間にかアイオリアは自分を好きになっていた。そして自分も………。
(私達はアテナの聖闘士だ。その任務は死と隣り合わせ…。
お互いがお互いを思っていても…叶わない想いも…きっと…あるね?)
━━━叶わないならせめて同じ血の荒野で果てよう━━━━━━━━