拍手お礼文再録

□《アイオロスの疑問》
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《アイオロスの疑問》


今日も今日とて教皇宮。
教皇補佐アイオロスとサガは執務に励む。
ただアイオロスは書類仕事より断然体を動かす肉体労働(鍛練とか戦闘)が好きなので、サガがちょっと目を離すとすぐドロンしてしまう。
その度サガがアナザーディメイションで連れ戻すのだが、連れ戻す時間も惜しい。
幾度も重なるアイオロスの脱走にサガはブチ切れていた。

「きぃ〜さぁ〜まぁーっ!何度も何度もどういうつもりだ!おまえは次期教皇なのだぞ!もう少し真面目にっ」

あはは〜とサガにとってはイラつきMAXな微笑みを浮かべながらアイオロスはへらへら笑うばかり。サガはこめかみに青い血管を浮き立たせてアイオロスを締め上げていた。

「っ!それが次期教皇になる者の態度か!貴様というヤツはどこまでっ」

もうちょっとで殴られるなぁと態度も変えずへらへら笑っていたアイオロスはふと不思議そうな表情を造った。

「なぁ、サガ」

「なんだっ!」

「私は教皇にならないよ」

「なんだと!シオンさまはおまえを次期教皇に指名されている。この後に及んでまたもや辞退でもするつもりかっ?」

「いやあのね。ならないというか、なる機会はないだろうな、と」

サガが訝しそうに締め上げた手を解く。

「どういう意味だ。シオンさまはおまえに」

「確かに私は次期教皇の指名を受けている。でもね。考えてもみてくれ。シオンさまの現在の肉体年齢は18歳なんだよ?」

「・・・それがどうした?」

「で、私は今14歳なのか27歳なのか今イチ分からないんだけどね」

「ますますわからん。なにが言いたい?」

「私は、そうだな。このままつつがなく老衰で死ぬとするだろう?」

「??」

「でも精一杯生きてもたぶんあと80年?まぁ90年くらいだとするか?でもシオンさまは今後最低243年は生きると思わないか?」

「!!なにっ?」

「何せ今18歳だぞ。シオンさまは元気な内は教皇を続けられるだろう。だから私が教皇になることはないと思うよ」

「・・・・・(汗)」

確かにそうだ。
教皇シオンは蘇ってから18歳の肉体を持ちアイオロスなどよりよっぽど精力的に元気ハツラツとして働きまくっている。今日などもなにやらロドリオ村で祭事があると呼ばれており、朝から厳つい教皇服とアクセサリーをぶら下げながら出ていった。
シオンは天秤座の童虎とは違い神々の仮死の法(MISOPETHA-MENOS)を受けていない。なのに平然と自分が殺すまで普通に(容貌は衰えたとしても)生きていたのだから可能性は充分にあるだろう。

「し、しかし、折りがあればおまえに教皇の座を譲ると」

「だからね。その折りが問題なんだ。私達普通の人間とジャミール一族の寿命はことごとく隔たりがある。シオンさまがここが折りと考えた頃は私がもう高齢者になっている可能性が高いと思うんだよね。
だが私は特段教皇になりたいわけじゃないしそれでいいんだけど。っていうかむしろ万々歳なわけなんだよ」

のほほんと呑気に笑うアイオロスをサガは似合わない顔で呆然と見つめる。
そしてサガは気がついた。

「それはそうかも知れんしそうじゃないかも知れんが、なんであろうがおまえが執務をサボる言い訳にはならんだろうが!話しを反らすな!」

「あははー。もうわかったのか。サガは賢いなー」

肩を竦めてにやけるアイオロスにサガの怒りは増してくる。

「きぃ〜さぁ〜まぁーっ!ふざけるなー!」

サガの金髪の毛の先が少し黒化してきたのをアイオロスは横目で眺めてますます嬉しそうに笑う。

「そんなに怒ってたら頭の血管切れるよ。落ち着け。サガ」

まぁまぁと如何にもサガのことを考えて言っているのだという態度が余計にイラつきを誘う。

「やかましいっ!誰のせいでこうなっていると思っているのだ!」

そんな様子を後から入ってきた真面目なシュラは言葉なく見つめコッソリ心の中で
『サガ、頑張れ』
と心の中でエールを送るしかなかった昼下がりの教皇宮・・・。



おわり


アイオロスはアイオロス自身で自分はあと243年は生きないだろうなーという疑問でした。



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