のーまるらぶss

□Holy Night
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冷たくて身体が凍えてしまう。
自分を抱きしめかこうように両腕を自分の首に回して鉛色の空から降り落ちる雪を眺めていた。

暗い空だ。

私は女神の護衛で日本から帰り聖域に着いたばかりだった。

女神からはクリスマスパーティーをするから日本に残るように言われたけれど、それでもよかったのだけど、聖域に帰ってきてしまった。

『約束があるからと…』

別に約束なんてない。
本当は約束なんて誰ともしていない。

ただ、待っているような気がしたのだ。
あの男が…。

何の確約も確証もない。
帰ってきたからといって天蠍宮に行くつもりもない。聖域に入ったばかりで空を眺めながら雪に見とれてしばらくつっ立っていた。

ふわ…ふわりと、
雪が降っていくけど、積もる事はない。
地面に吸い込まれて溶けてゆく。
雪は不思議だ。滅多に見る事はないから珍しくて見入ってしまう。

「オレに会いたくて帰ってきたか?」
突然聞き慣れた男の声がする。
「そんなワケないだろう」
当たり前のように返す私。
「まあいい。オマエを待っていた」
おもむろに手を取られて抱き上げられた。
この男の行動はいつも唐突で私に拒否を許さない。
私は待っていたかも知れないのに素直にそれを伝える事もできない可愛いげのない女だった。
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