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□Noir〜ノワール〜
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フランスの国境近くのスペインの町…シゲーラス。
カミュは所用でフランスに来たついでにこの町に立ち寄った。
派手な都会ではないが、踊りと美味い酒が飲める店に日本から自分に会いに来ていた愛弟子も連れていた。
バレンシアと石榴の木々があちこちにあり、薄暗くなってきた町並みを叙情的に香らせていた。
氷河はカミュに連られながら、いつもの彼とは違う浮足だった様子で街並みを歩いていた。
そんな愛弟子の様子にカミュは少し微笑む。
『氷河はスペインははじめてだろう?』
『はい、我が師カミュ。オレはシベリアと日本しか知りません』
『そうか…』
『先生はここによく来るのですか?』
『いや…よくと言うほどではない。私は任務でいろんな国に行くからたまに立ち寄る程度だ』
『そうなんですか』
『氷の聖闘士にはそれにふさわしい任務が与えられる。現在私とおまえだけが氷の聖闘士なのだから、これから先、同じ任務につく事もなきにしもあらずだ。いろんな場所に地理感を持っておいて損はないぞ』
『はい、我が師カミュ』
素直でかわいらしい愛弟子はカミュの言葉に素直にうなずいた。