鬼の本

□歩いて
1ページ/1ページ



歩いていった。
どこまでも長く遠く、目的も分からないまま、ただ歩いていった。

朝がきて、昼がきて、夜がきた。
けれど終着点など、見えなかった。


友人達は皆、僕よりもずっと遠くにいた。
僕と同じように歩いていた。

ふと、僕が進む方向から老人が歩いてきた。
僕とは、逆方向へと進んでいる。

老人はしゃがれた声で「久しいですね」と頭を下げた。
僕は、会ったこともない老人だった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ