長編夢小説

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体育館である程度説明を聞き、
それから徳川と杏樹はテニスコートへ向かった。
「うへぇー。すごいなぁー!
ウチの学校のテニスコートとは大違いやで!」
杏樹は感嘆の声を漏らした。
「最新鋭の設備も整っている…。
流石だな。」
そんな事を話していると
「ねー、そこの可愛いおじょーちゃん!良かったら俺らと遊んでくれない?」
どう見ても不良にしか見えない高校生の2人組が近づいてきた。
「徳川、可愛いって言われとるで。よかったな。」
「いや、絶対俺の事じゃないから、てか、お前の事だから。」
軽く徳川には杏樹突っ込まれた。
「うおぅ。ウチ可愛いんか。なんか照れるわー!」
杏樹は呑気に照れていたので徳川はため息を一つついた。
そんな2人の様子にしびれを切らした不良二人は、怒りだした。
「おい!さっきから俺らほっといてイチャついてんじゃねーぞ!」
「おじょうちゃん、君の彼氏がボコられる姿を見たくなかったら、
ついてこいよ。」
そう言って、不良はグイっと杏樹の腕を引っ張った。
「うぉう!?」
杏樹が驚いていると徳川が
「そいつに触るな。」
と言って、もの凄い勢いで不良を睨む。
「あぁん?」
不良は更に怒りだした。
「本当に、殴られねぇと気が済まねぇみたいだな」
不良の一人がそう言うと、もう一人の不良が。
「いや、殴るのはマズイだろ。下手すりゃ俺らは退学だ。ここはテニスで勝負といこうや。ちょうどテニスコートの前なんだしよ。」
どうやらそこの不良の二人はテニス部らしい、
「わかった。」
徳川は、不良からラケットを受け取り、コートへ向かった。

*         *          *

「うそ、え、ちょっと待ちぃやあんたら!可笑しいやろ!」
杏樹はフェンス越しに不良と徳川の試合を見ていた。徳川は高校生よりもテニスが強く、あっさりと勝ったのだが、怒りくるった不良高校生がいちゃもんをつけて、2対1つまり、徳川VS高校生2人というもの凄く卑怯な構図に仕上がっていたのである。
「あんたら卑怯やで!2対1とか卑怯や!正々堂々試合しろや!」
杏樹がそう言うと、
「うるせぇ!悔しかったらラケット持って、試合に入ってこいよ!」
と、不良が返すだけであった。
もちろん、杏樹はラケットなんて持って来てはいなかった。
「どないしよ…。」
徳川は、2対1というかなりきつい試合でも、なんとかボールを返しているが、それでも少しキツそうだ。
「どうかしたのかい?」
杏樹が振り向くと、そこには門の前に立っていた青年がいた。
「あ、えと…その…うー。
なんとびっくりウチを賭けて勝負というものすごい素敵な試合をしてるらしいんですけど、正々堂々試合してないんで、ウチが参戦したいけど、ラケットなくてどうしようか迷ってる所ですわ。」
と、杏樹は説明した。
「なら、僕のラケットを貸してあげるよ。」
青年はラケットを取り出し、杏樹に渡した。
「え…。ええんですか…?」
「うん。いいよー。一番軽いラケットだから多分君でも使えるんじゃないかな?」
「おおきに!」
青年からラケットを受け取り、
杏樹はコートへ乱入した。
「あの子凄いねー。人に頼るんじゃなくて、自分でなんとかしようとするんだねー。」
青年はしみじみと杏樹を見ながらつぶやいた。

*          *          *

「ラケット手に入れたから、参戦するわ徳川。」
徳川は、驚いた顔をしたが、
「そうか」
と一言つぶやき、すぐに目線を戻した。

結局、徳川との杏樹コンビネーションが素晴らしく、圧勝したのであった。
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