長編夢小説

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大阪に着き、杏樹は学校へと向かった。
「今日は日曜日やけど、部活はあるから、みんなに会えるやろー。」
杏樹は気分よく、部室のドアを開いた。
「やーやー!諸君!がんばっとるー?」
部室にいた部員が一斉に振り返る。
「あぁあ!杏樹先輩!」
部室にいた少年の一人が杏樹に抱きついてきた。
「うおぅ!?」
杏樹は一瞬、たじろいだがなんとかふんばった。
「あぁん!蔵リンったらズルいわぁ〜♪」
更にまた一人少年が抱きつく
「な!?小春!浮気か!?」
また一人抱きつく。
「おおおお、お前ら!何やっとんねん!」
また一人少年がくる。
「う…。」
杏樹は耐えきれずにその場に倒れてしまった。
「ちょ、なにやっとんねん!杏樹先輩くるしがっとるやろ!?」
新しく部室に入ってきた部員に杏樹は助けてもらい、なんとか立ち上がった。
「あー。びっくりした。小石川。助かったで。あれ?銀は?」
「師範は修行にでとります。」
杏樹に小石川と呼ばれた少年はそう答えた。
「白石、急に飛びついてくるからびっくりしたで。あ、包帯緩んどる。」
杏樹は白石と呼んだ少年の包帯をまき直した。
「だって先輩昨日おらんかったですやん。」
白石と呼ばれた少年は杏樹にべったりとくっつく。
「やーん!蔵リンったらぁー!」
「浮気かー!」
「あはは!やっぱり小春とユウジは面白いね!いっつもライブも最高やし!」
小春とユウジと呼ばれた二人は肩を組んだ。
「それより先輩。昨日はどこいっってはったんですか?」
「おー!謙也ー!よくぞ聞いてくれたー!」
謙也と呼ばれた人物は杏樹の右隣に座った。
「昨日は志望校のオープンハイに東京まで行ってきてん!」
杏樹がドヤァという顔で言った。
「………」
部室が一瞬にして沈黙した。
そして、白石がヒステリックな顔をして、
「嘘や!先輩!四天宝寺の高等部に行かんのですか!?」
杏樹の両手を握りしめながら白石が聞く。
「え…。」
謙也もグイっと近づき、杏樹を見据える。
「俺ら、杏樹先輩のおかげでここまでやってこれたんです。だから、高校になっても、杏樹先輩にサポートしてもらいたいっちゅー話ですわ。」
杏樹は瞳を伏せた。
「そんな!杏樹先輩が高等部にいないとか、そんなの考えられへんわー。」
小春が泣きそうな顔をする。
すると、そこへ。
「よー!日暮おかえりー!東京の土産あるかー?」
顧問の渡邊オサムがやってきた。
「…。なんか取り込み中みたいやな…。」
オサムが踵を返し、帰ろうとするのをユウジが止める。
「オサムちゃんは知っとったん?
杏樹先輩が東京の高校受けるって。」
他の者の視線もオサムへ集まる。
「あー。まぁ、顧問やし、一応は。」
オサムがそう答えた。
「なんで止めへんかったんですか!?」
白石が叫ぶ。
暗い雰囲気の中、杏樹が口を開いた。
「ウチの人生なんやから、ウチが決めてええやろ?」
突如言われたその言葉に部員達は瞳を丸くする。それから杏樹は
「ウチは頑張っとる選手をサポートしたいねん。それは、学生の時だけやなくて、将来。大人になってもそうしたいねん。ウチの行きたい学校は、そういう専門的な事も学べる。そういう職業に着くための近道にもなるねん。」
と言った。
「でも、俺らは杏樹先輩がおらんかったら!」
謙也が言った。
「好い加減にしい!」
オサムが口を開いた。
「自分らは日暮に頼り過ぎや。
そんなんで、強くなれるとでも思っとるんか!いつまでも日暮にばっか頼ってたら、自分ら強くなれへん。日暮も道を選べなくなる。
中1の自分らの頭で考えたら少しは分かるやろ!日暮は自分の進むべき道を決めたんや。それを応援したるのが、お世話になった自分らのつとめやろが!」
部員達はその言葉でやっと気持ちを沈める事ができた。
「先輩。すいませんでした。」
白石が口を開く。
「んー?なんのことー?」
杏樹は笑う。
「俺ら、先輩のこと…!」
謙也が言う。
「こんなに慕われてるんやと思えて嬉しかったで!おおきにな!」
杏樹が満面の笑みを浮かべる。
「ウチら、先輩のこと絶対応援しますからね!」
小春が言う。
「さー。話も一段落ついた訳やし。日暮、お土産くれー!」
オサムが言った。
「せやねー。みんなで食べようかー!」
杏樹はもっと頑張ろうと思える日になった。
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