野良猫ギターマン

□レッツラゴー!
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誰がそう呼び始めたのかは知らない。
でも、彼ら2人はコンビ名のように「レッツラ」と呼ばれていて、この学校で彼らを知らない人は多分いない。


なぜ有名か。
それは彼らがことあるごとに、何かをやらかすからである。


各クラスのチョークが全部ココアシガレットになってたり。
パソコン室のパソコンの壁紙が全部彼らのキメ顔の写真に変わってたり。
お昼の放送をジャックしてラジオコントを繰り広げ、爆笑の渦を誘ったり。


この学校で時々起こるそんな騒動は、まず彼らの仕業だった。


何かの行事の時などは、もはや彼らの独壇場だった。
先月の卒業式の時には、あの厳粛な場で2人だけしれっと鼻眼鏡をかけて並んでた。
それに気付いた瞬間、噴き出す生徒続出。そして、伝染していく笑い。
しんみりするはずの卒業式で、いったい何人が腹筋崩壊したか知れない。


そんなふうに、退屈な学校生活に不意に笑いを与えてくれるイタズラギャング。
彼らは全校生徒の人気者で、みんな彼らが大好きだ。
もちろん、私もその1人。


おそらく今日も、彼らは何かをやらかして先生に追いかけられてるんだろう。


「今日の福田、しぶとくね?」

「ああ。さすがにアレは逆鱗に触れたか。つか、追っかけっこ飽きた! この辺で撒こうぜ」


近づく足音。
そして、ごく近くで2人の声が聞こえた。
入口の扉の擦りガラスの向こうに、影。


次の瞬間、勢いよく部室の扉が開かれた。
私は、ビクッと身体を強張らせた後、飛び込んできたその人たちを見て「ぎゃあ」と叫びそうになる。


「お邪魔するぜ!」

「ごめんね、ちょっと隠れさせて!」


れ、れ、れ…
レッツラだああぁぁ!!!


本物の彼らの登場に、私はパニックに陥った。
目立つ存在だから、校内でたまに目にすることはあるけど、私にとっては遠くから見てるだけの存在。
言ってみれば、ちょっとしたアイドルみたいな感じだから。


そんな彼らが突然自分の前に現れて、私の方にまっしぐらにダッシュしてきたものだから。
えっ、何、何なの、ぎゃああああ。


私の思考は完全にストップ。
パソコンに向かったまま、カチンコチンに固まってしまった。


 
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