サマーメモリーズ

□10.
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***


廊下を歩いていると、「前祝いだー!」と言う声が聞こえてきた。隣に居るなまえさんを見れば、「ここ、台所ね」と返す。一緒に中を見る。

髭の男の人が、ドシドシと箱を持ち込む。蓋を開ける度に見えるのは、大量のスミイカだった。一つ目の箱、二つ目の箱と開ける度に一同歓声を上げる。
凄いだろう!と言って、最後の蓋が開けられる。しかし一同の歓声は弱弱しく……

「イカばっか……」

その言葉に、髭の男の人は大笑いした。

「でもなまえはイカ大好きだぞー!」
「あぁ……ん?そうだっけ?」
「おうよ。あの子はたこ焼きに全部イカ入れるからな!」
「それはさすがに嘘でしょ!」
「や……でも……」

なまえならしかねない、と言う言葉に
誰一人とて、異を唱えなかった。




―――健二はなまえを見た。
なまえは俊敏な動きで目を逸らす。真っ赤になった頬を両手で包んでいる。


「あれ、本当?」
「ううう嘘に決まってんじゃん馬鹿何信じてんの!?」


なまえは小声であっても迫力があった。何故なら必死だったからだ。


「たこ焼きにイカ入れるって」
「嘘だって!ほら次行こう次ッ!」


なまえは無理矢理健二の腕を引っ張った。



















「イカ、」
「もういいって!」




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