サマーメモリーズ
□17.
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なまえは少し経った後、箸を置いた。テーブルに置かれた料理は、まだ殆ど減っていない。
「もう食べないの?」
話しかけた理一を見上げる。
「うん。ちょっと佳主馬んとこ行ってくる。」
なまえは一応手を合わせると、「また戻ってくる」と残して席を外した。
***
佳主馬は隣でゴロゴロしているなまえをチラリと見た。
なまえは突然、ふらりとそこへやってきたのだ。
どうしたの、と聞けば
癒しを求めに来た。
と答えた。
意味が解らなかった。
僕に癒す力など無いし。
だけど本当は、様子を見に来てくれたのかな、とも思った。勝手にだけど。
それは本当に只の憶測でしかなく、本当の理由は単に静かな所へ行きたいだけだったのかもしれない。なまえは、あまりこの家の人と皆でわいわい騒ぐのが得意ではないようだ。
じゃあ、何故自分の所に?という考えを急いで振り払う。
どうすれば良いのか分からなくて、取り敢えず隣をポンポンと叩く。「邪魔じゃないよ」の合図だ。
―――それにしても、
癒し、と言われたって……何も思いつかない。良く解らないので、「久しぶりにOMCやる?」と提案する。OMCとは、OZで人気のバトルゲームの事だ。
「でも私、下手だし」
話しにならなくてつまんないよーと、なまえは零す。
そんなことはない、と佳主馬は思った。
思ったけど、口に出来ないまま。
「じゃあ、僕が教えるよ」
えっ、となまえは起き上がった。
「……何その反応。前から結構教えてたじゃん」
「だって、最近忙しそうだから」
「普段は普通の中学生だよ」
そんな忙しい訳ないじゃん、と素っ気なく返した。
「でも仕事なんでしょ?それ」
「もう終わったよ。」
ほら、と言って画面を見せる。
佳主馬は、なまえが「忙しそうだから」と言って遠くへ行ってしまうのが嫌だった。
うーんとなまえが、宙を見上げる。
「じゃあ」
どうなるんだろう、となまえを見る。
「……お願いしようかな?」
へらりと困ったような顔で、けれども嬉しそうに笑うなまえ。
佳主馬は精一杯の無表情を繕った。