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□04,
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優佳は一人教室前の廊下を悠々と歩いていた。


「あーぁ、竜ヶ峰くんは杏里探しに行っちゃったし、正臣は何も言わずにいなくなったし…つまんないなぁ」


足を止めて窓の外の綺麗な夕日を見ながら寂しそうに呟いた


――正臣どこ行ったの?


「なんだ小鳥遊。まだ残っていたのか」


ぼんやりと歩き出した優佳は、背後から唐突に声をかけられて身をすくませる。


「ッ……」


「なにを驚いてる」


優佳が振り返ると、そこには背広を着た強面の教師が立っていた。一年C組の担任だったという事までは、覚えている。


「どうした?ん?体調が悪いんだったら保健室に行くか?」


ネットリと身体を舐めまわすような視線が、優佳に恐怖を絡み付かせる。


「い、いえ。大丈夫です」


「そうか……?」


女子生徒はこの教師に話しかけられるたび無視をしているが、優佳は強ばったあまり返してしまった。これが失態となってしまったのだ。そして、教師は優佳の胸と腰を舐めるように見た。


「なんだったら、家まで送ってやろうか」


「……あ、あの、結構・・・です」


「冗談だ……はは」


曖昧な笑顔で相槌をうつ教師を見て、優佳は背中にゾクリと寒気がはしる。さっきの言葉は冗談ではない・・そう感じさせるように。

そして、目の前の教師が自分に向けている視線の意味も、だいたいは理解できなくもない。


【何人かの女子生徒と関係を持ち、卒業後もその事実を元に関係を追っている】


【セクハラしておきながら、脅して口を封じている】


【成績をネタに、女子生徒と関係を迫る】


などの世間的にありがちな話を正臣から最近聞いたばかりであった。
その教師らしくない顔だけで誰かも確信がついた。


「あ、じゃあ・・わたし先急ぎますんで」


そう言って早くその場から去ろうとした優佳を無理矢理ひき止めるように話かけられると優佳は恐る恐る後ろを振り向いた。


「なあ、小鳥遊。お前、付き合ってる奴がいるって本当か?」


ドクンと心臓が波打ったあと、吐き気と冷や汗が身体から止めどなく感じられる。
どうしてこの教師が、そんなことをしっているのか。
優佳は震える手を必死で押さえつけた。


「は…… ・・い」


「そうか……、何か困ったことがあったら、なんでも相談していいんだぞ。」


「今のところは…先生に相談することは・・・なにも、・・ないです」


空気が重い。うまく空気が吸えない。うまく喋れない。それよりも、この身体を探られるような視線と言葉をどうにかしてほしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
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