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「で、動機はなんだ?」


「……」


「名を売る目的でもなく、基本的に金も動いてねえ集団が、切り裂き魔って形を取ってまで黄巾賊を潰す事になんの意味がある?」


「それが解れば苦労はしないし、私怨だってありえるかもしれない」


少し躊躇いながら答えた正臣に対し、門田は畳みかけるように言葉を紡ぐ。


「私怨だぁ?黄巾賊が昔ダラーズと揉めたって話は聞いてねえが」


「ダラーズとは、でしょう?」


「……」


正臣の言わんとした事に気づいたのか――門田が渋い顔をして黙り込んだ。
自分でも触れたくない話題だと言わんばかりに、正臣は吐き捨てるようにその単語を呟いた。


「ブルースクウェア」


その固有名詞を聞いた瞬間、門田の眉間に深い皺が刻まれた。


「……紀田ぁ」


「あのチームが俺らにやった事は忘れてないし……俺が抜けるきっかけになったあの事件で一応収まりが付いたけど……それで、怨みが消えたわけじゃない。そう思ってます」


「それで、俺の所に来たわけか?」


門田はしばし考え込むように黙っていたが、正臣は相手の言葉を待つ事無く、更に言葉をなげつける。


「なあ、門田さん。アンタから解るでしょう?ダラーズのボスを教えて欲しい。できる事なら……ダラーズの中に、アンタの昔の仲間が……ブルースクウェアの奴らが何人――」



バキリ



乾いた音が、正臣の言葉を遮った。
見ると、横でいつも通りの遊馬崎が、据え置きの割り箸を縦に折り割っていた。


「やだなあ、紀田くん」


鋭い木片と化した割り箸を手に弄びながら、遊馬崎はいつも通りの表情で口を開く。


「駄目っすよ。現実と妄想をごっちゃにしちゃ」


ある意味、最も遊馬崎らしくないセリフを吐き出しながら、ハーフの青年は徐々にその表情から笑いの色を消していく。


「ブルースクウェアなんて、存在しなかった。それでいいじゃないっすか」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、正臣は掌を机に叩きつけた。
湯飲みが激しく揺れ、中の液体をくゆらせる。
 
 
 
 
 
 
 
 
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