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東急ハンズ前


雨の勢いは些か弱まっており、風によって飛ばされた雨粒が傘の横から入り込んでくる昼下がり。


「ホラダ……ホラダ……」


アニメイト池袋本店へと向かう道を歩きながら、門田は先刻耳にした名前を何度も繰り返して呟いていた。


「なんすか門田さん、新手の呪詛っすか?」


「ホ・ラダホ・ラダっていうとなんか呪文みたいよね。束縛系か召喚系っぽいわね」


「ええい、混乱させんな」


背後からの意味不明な呟きを制しながら、門田は再び名前を呟いた。


「……法螺田」


「なになに、どうしたのよドタチン。さっきから変に考え込んじゃってさ」


「ああ、さっき、黒バイクに黄巾賊のホラダって奴がやられたって言ってたろ」


難しい顔をしながら、門田は自問自答のように自分の考えを言葉にする。


「大した事じゃねぇんだが……。そうだよな。確かに珍しい名字だが、漢字が違うかもしれねぇし……だが、ちょっと気になるんだよな」


「なにがっすか?」


「いや……昔の知り合いの中に……そんな名前の奴がいたもんでな」


それ以上は考えてるだけでは埒が明かぬとばかりに、門田は別の話題を切り出す事にした。


「しっかし、あの板前、マジで危ねぇよな。一歩ずれてりゃ御陀仏だったぞ」


「ごめん、私はちょっとカッコイイと思った」


「俺もっす。包丁をオモチャにするなといきなり立つ料理漫画の主人公と、コマンドサンボで対決する姿が頭に思い浮かんだっす」


「これだから現実と妄想の区別が付かない連中は……!」


怒りを通り越して呆れるしかなくなった門田は、片手で頭を抱えながら大仰に首を振った。そんな門田に反論するように、狩沢が目を輝かせながら口を開く。


「でもねぇドタチン。あの板前さん、マジですごいっぽいよ。元ロシア軍の格闘技の教官やってたとか、アメリカから渡ってきたマフィアと闘った事があるとかなんとか」
 
 
 
 
 
 
 
 
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