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「あー、本屋だったら、ジュンク堂だとおもうけど……ね?正臣」


「ベストな場所はな……何を買うつもりよ?」


「ええと、とりあえず帰ってから読む漫画でも買おうかと思って……」


それを聞いて、正臣は静かに歩きだした。


「じゃあ、そこの奥にマンガを沢山売ってる店があるからそこに行こう」



正臣はゲームセンターのある十字路まで歩くと、そこを右折したところにある道へ入っていった。


「なんか同人誌とかも売ってるみたいだけど」


同人誌。ネットに入り浸っている帝人にとっては全くの道領域では無かったが、実際に自分で購入した事は無い。


「は、入ってもいいの?怒られない?」


「はぁ?」


優佳は吹き出してしまい、正臣が相方の突拍子も無い言葉に戸惑っていると、突然後ろから声がかけられた。


「紀田君じゃん」


「優佳ちゃんも、久しぶり」


「あー、狩沢さんに遊馬崎さん、どうもです」


そこに立っていたのは、男女二人組だった。昼間から外に出ているというのに、二人ともヤケに青白く、男の方は目つきの鋭いヒョロっとした男で、背中に重そうなリュックを背負っている。
帝人が二人の方を見ていると女の方が紀田に尋ねかけた。


「そっちの子は誰? 友達?まさか恋のライバル?」


「冗談やめてくださいよ、狩沢さん。こいつは幼馴染みで、今日から一緒の高校になったんすよ」


そう言う正臣はケララと笑っていたが目は笑っていなく優佳の手を優しく握った。


「へぇ、今日から高校生になったんだ。おめでとう」


微妙に噛みあってない会話を聞いていると、正臣が二人の事を紹介し始めた。


「こっちの女の方は狩沢さんで、こっちが遊馬崎さん」


「……あ、え、ええと……竜ヶ峰帝人っていいます」


その名前を聞いて、遊馬崎と呼ばれた男が首を傾げ、戸惑う帝人を前に、遊馬崎は何故か狩沢に向かって尋ねかけた。


「ペンネーム?」


「なんで高校一年生がペンネーム使うのよ。 ……ああ、ラジオとか雑誌投稿とか?」


「あ、あの、一応、本名です……」


帝人が消え入りそうな声で指摘すると、男女の目が僅かに大きく見開かれた。


「嘘ぉ、本名なの!?」


「いや、凄い!カッコいいじゃないすか!いやいやいや、マンガの主人公みたいだ!」


狩沢と遊馬崎の言葉に、


「そんな……照れるじゃないですか」


「紀田君が照れてどうするのよ」


自分の話題にも関わらず会話から置いていかれている帝人は、どうしていいのか解らずにその場に立ち竦む。やがてその状況に気が付いた遊馬崎が、携帯電話の時計に目をやりながら呟いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
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