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□05,
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♂♀
「さっきの警察の人、杏里のクラスの葛原君に似てたね」
「え?なんでしってるんですか?」
「だって、ほら。私、風紀委員だから」
優佳は子供っぽい無邪気な笑顔で言うと、杏里は納得したように頷いた時――
2人の背後に、一人の男が立っていた。男は懐から刃物を取り出し、音も無く少女達に一歩近づいた。
そして、そのまま刃物を夜空に高く振り上げ――
♀♂
「うお!やべぇ!なんか得物持ってんぞあいつ!」
運転席から、渡草の叫び声が響きわたる。門田達もバンの後部からフロントガラス越しに前方を見るが、そこには緊迫した光景が繰り広げられていた。
道の端で、笑いあっている制服姿の少女達と――道の真ん中辺りで、刃物を振り上げてゆっくりと少女に近づいていく男。
門田は男の異常な雰囲気が気になって、運転手の渡草に先刻の道を引き返すように言って、ようやく狭い道を切り返してきたのだが――予想は的中し、今、まさに通り魔の現場に居合わせた。
そのとき狩沢が少女達をみて声を上げた。
「あれ、優佳ちゃんじゃん!」
「紀田君の彼女っすよね?」
狩沢は頷くと、門田はほんの一瞬考え、運転席の男に声をかける。
「渡草ぁ、無茶言っていいか?」
「なんだ」
鋭い目つきの運転手は、門田がこれから何を言っているか解っているかのように、アクセルを強く踏み込み――
そして門田は、渡草が期待した通りの単語を口にした。
「撥ねろ」
♂♀
激しいクラクションが聞こえ、杏里と優佳は唐突に現実に引き戻された。慌てて塀に背中をつける優佳が見たものはバンではなく――
目を充血させて……いや白い部分は全て残っていなく、赤い球体の中に爛々と輝く瞳孔が浮かんでいる、切り裂き魔だった。
「……!」
杏里が現状を把握し怯えていると、それに気づいた優佳が杏里を庇うように前に出ると――
一片の容赦もなく、バンが切り裂き魔を跳ね飛ばした。
優佳と杏里が目を丸くしながら塀に背をつけている目の前で、停車したバンから数人の男女が降りてきた。
「死んだかな?」
「まったく酷い人っすよ門田さんは!人が平穏に生きたいって言った直後にこの仕打ち!」
緊張感を感じさせない狩沢と遊馬崎の言葉に続いて、門田だけが緊張した面持ちで道路の先に目を凝らしていた。
しかし、優佳は緊張が途切れたのかその場にへたりこんだ。
「首無しライダー……と、……静雄!?」
しかし優佳はこの門田の言葉に顔を上げた。