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□06,
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そして翌日も、帝人と正臣はやってきた。
正臣は来てそうそう優佳の病室に向かい、先に優佳の様子を見ていた杏里と少し話したあと穏やかな顔で未だに眠っている優佳の頭を優しく撫でていたが、不意に彼の携帯電話が音を立てる。


「正臣!駄目だよ、病院の中は電源切んなきゃ!」


「わりぃわりぃ、気をつけるわ。あと、ちょっとメールで呼ばれちまってさ、今日は一旦帰る」


「ええッ、そんな」


「ってことで、この病室から出ろ出ろ。俺が居ないときはこの病室、杏里以外立ち入り禁止だからな!」


そんな身勝手な事を言って病室を去る正臣。あの言い方では今日はもう戻ってこないだろう。正臣には入るなと言われ優佳の病室を後にして、帝人と杏里は杏里の病室に戻っていった。


♂♀


「……俺を、引き戻さないでくれ」


池袋から少し離れた、都内のある廃工場。都心とは思えないほどに閑散とした空気の中に――数百人もの人影が蠢いていた。その人影の主はどれも若く、小学生から高校生の少年少女達で構成されている。

さらに特徴的だったのは――その少年達の服装こそはバラバラだったものの、工場内にいる全ての人間が――揃いも揃って、黄色いバンダナを巻いていた事だ。


「本当にいやなんだよ。わかる?」


その工場の中に、雰囲気とは正反対のけだるげな声が響き渡っていた。


「俺の気持ちがわかってたまるかって言いたいところだが、もしもお前がエスパーで俺の心を本当によんでたらなんだか負けた気分になるからあえて言わないよ俺は」


他に言葉を紡ぐ者はおらず、ただ、ダラダラとした声だけがこだまする。
 
 
 
 
 
 
 
 
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