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□「彼女と妖艶な奇術師」
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「あの日、チベット家に何があったんだい?◇」
きーは、一瞬家族の姿が脳裏を横切った。
私はあの日…
チベット家は、ごく普通の休日をみんなで過ごしていた。家族全員が揃ったのは、かなりひさしぶりだった。
夜、
チベット家の敷地内の森で、鳥や動物達がざわつくのを感じとった。
襲撃だ…
きーは、戦う事は嫌いでは無かったが、夜の襲撃となると少々めんどうであった。
父と兄二人は、様子を見に外に飛び出して行った。しかし、いくらたって
も戻ってこない。きーは窓からチラリと覗いてみた。森が…敷地内が火の海だったのだ。
ゾワワワッ
凄いオーラの奴等が、こっちに向かって来ることが感じ取れた。こんな、凄いオーラを放つのは、かなりの念使いに違いない。あに…達はどうしたんだろう…心配になってきた。
ブォォォオオオ
火が、家の方に回ってきた。
母は、判断した。このままでは、みなやられてしまう。この子だけでも…っ、母はきーの事を裏口に連れていった。
バンっ、
ついには、家の中に侵入してきた。
母は、きーに言い聞かせた。きー…、今から言うことを実行してね。命令よ… 母は心を鬼にした。ここから、出来るだけ走って逃げるの。絶対に後ろを振り向いてはダメ。いい?守れるわね、きーは、ふるふると頭を横に降った。母は涙ながらに、大丈夫、あなたなら立派な念使いにきっとなるわ…、母はきーの事を軽く押した。大丈夫…きっと…
その時だった!
母の後ろに、黒い人影が見えた。
ざしゅっ…
皮膚が切り裂かれ、血が飛び散った。
ドタッ
母は、きーの足元に倒れた。きーは、母に駆け寄った。はは…はは…呼び掛けても反応しない。きーは男を睨んだ。オーラから、勝てそうな相手では無いことは直ぐに分かった。悔しかった。
きーは、駆け出した。けして、追い付かれないよう。振り向かず、必死にその場から離れようとした。
「っち、逃がしたか…まあ、ガキの一匹ぐらい団長も許すだろ。目的は果たしたしな…」
刀を腰に下げた男は、小さく嘆いた。