刀神

□伍ノ太刀
1ページ/4ページ


翌日、僕らは迷宮区へと続く森を45人という大部隊で行進していた。

と言っても、僕ら3人は最後尾でしかも本隊と若干の距離を取っていたが
(揃いも揃って人付き合い悪いもんw)


黙々と森を歩いている時、不意にキリトが口を開いた


「なあリグ」

『ん?』

「俺らってさ、取り巻きの相手だろ?

ローテどうする?」

『あー…前頼んでいい?』

「ああ、いいぜ。

じゃあ、アンタは俺がセンチネルの剣を跳ね上げさせたらリグと一緒に《スイッチ》で飛び込んでくれ」

と、キリトがアスナに話を振るとアスナは

「…《スイッチ》って?」

と首を傾げた。



…可愛いなぁアスナは←黙ってろ


ちなみにキリトは口を開けたまま固まった


「…もしかして、パーティー組むの初めてなのか?;;」

キリトの問いにアスナがコクンと頷く


「…………………………(゜Д゜;)」


『(凄い顔だな…ww)

《スイッチ》って言うのは…───────』
































ボス部屋の前でディアベルは剣を抜きカンッと音高く床に突き立てた。

みんなが注目する中、ディアベルが口を開く

「みんな、もうオレから言うことはたった1つだ。


……………勝とうぜ!!」


リーダーの言葉にレイドメンバーが無言で頷く。


それを見たディアベルは短く

「行くぞ!」

と叫び、扉を開いた。




























『(こんなに広かっただろうか…)』

約4ヶ月振りに第一層迷宮区ボス部屋を見て、僕はまずそう感じた。
奥に向かって延びる、長方形の空間だ。

左右の幅は約20m、扉から奥の壁までが100m。

ボス部屋以外はもうほとんどマッピングされているから、その数値的なサイズは地図の空白エリアを見れば割り出せるのだが、それでも実際目にすると数字を遥かに超える奥行きを感じる。

この距離が大いにクセモノなのだ。

アインクラッドのボス部屋は、戦闘が始まっても大扉が基本的には閉まったりしない。
(僕らの知っている下層限定だが)

だから敗色濃厚となった場合は全滅を待たずに逃走することは可能なのだが、ただ後ろを向いてダッシュするだけでは長射程ソードスキルを背中に食らって行動遅延(ディレイ)、ヘタすると行動不能(スタン)。
故に体はボスに向けたまま後退しなくてはならないのだが、いざその状況になると100mが無限に思えるほど長い。

瞬間的なテレポートが可能となる《転移結晶》を入手できる上層階のボス戦の方が、いっそ撤退はラクかもしれない。
まあ結晶アイテムは途轍もなく高価なので、撤退後の赤字額が激増するのも確かなのだが。



そんなことを考えていると、ほぼ暗闇に沈んでいたいたボス部屋の左右の壁で、ぼっと音を立てて粗雑な松明が燃え上がった。
ぼっ、ぼっ、と松明は次々に奥へ向かって数を増やしていく。

光源がジェネレートされるにつれ、内部の明度(ガンマ)も上昇する。

ひび割れた床石や壁。
その各所に飾られた大小無数のドクロ。
部屋の最奥部には粗雑かつ巨大な玉座が設けられ、そこに坐する何者かのシルエット─────────────


ソイツは松明全てに火が灯ると猛然と跳び、空中でぐるりと1回転し、地響きと共に着地。

狼を思わせるあぎとをいっぱいに開き吼える。

〔グルルラアアアアアッ!!〕

その咆哮に誘われるようにセンチネルが出現した。


ディアベルが高々と掲げた剣を振り下ろす


「攻撃開始!!」


それを合図に部隊が部屋になだれ込む



『(見た目はそのまま、か…)』


獣人の王《イルファング・ザ・コボルドロード》の外見は、全て記憶にあるとおりだった。

青灰色の毛皮を纏った、2mを軽く越える逞しい体躯。
血に飢えた赤金色に爛々と輝く隻眼。
右手に骨を削って作った斧、左手には皮を貼り合わせたバックラーを携え、腰の後ろには差し渡し1m半はあろうという《湾刀》を差している


「A隊C隊スイッチ!B隊ブロック!」


等、ディアベルの的確な指示により、戦術が破綻する様子も無くパーティーの平均HPも8割で安定している


「D、E、F隊!
センチネルを近づけるな!」


「了解!」

『それじゃ、やりますかね』

まずキリトがダッシュで敵との間合いを詰め、剣を弾く

『お先どうぞ』

「分かった」

「スイッチ!」

その一言でアスナが飛び込みレイピアの連撃を食らわせると、センチネルは爆散した。


《リニアー》以外は素人だと思っていたが、訂正せざるをえない。
凄まじい手練れだ。











つーか………


『(キリトとアスナだけで足りてんじゃん…;;)』

「リグ次行くぞ!」

『ん』

今度は僕がスイッチで飛び込みセンチネルに剣を突き出す。
センチネルの弱点は鎧の間の喉元だけだが、そこは僕にとって大した問題じゃない。
ヤツらはキリトに攻撃を弾かれたことで硬直時間が課せられている上に、この程度の速さなら僕には“見える”。

というより見えなくてはならないのだ。
なんせ、これくらいのものが見えなくては………




















━━━━━[この程度がかわせないようではこれから先が思いやられますわよ?
────────さん♪]━━━━━




















『────────────────ッ!!
(しま………っ)』


脳裏をよぎる声と笑顔に思わず動きが止まる


「!リグ!?」


僕の異変に気づいたキリトが駆け寄ってくる

「どうした?どこかやられたか?」

『いや、違う……なんでもない……

(あ゙ー…自爆した……;;

自分で勝手に思い出して動けなくなるなんて……)

くっそ…情けない……っ』

「へ?」


『そっち任せた』

「ちょ、おい!?;;」

アスナをキリトに任せ、単身でセンチネルと戦い始める。

硬直時間なんて無くても、これくらい余裕だ。

自身に対する苛立ちをぶつけるように、片っ端からセンチネルを薙ぎ倒していく
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ