刀神
□捌ノ太刀
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深夜……目を覚ました僕はベッドの上でぼんやりと座り込んでいた。
ベッドから少し離れたテーブルではキリトがすやすやと眠っている。
……なんで僕キリトの部屋にいるの?
まあいいけど。
目を覚ました原因は夢見が悪かったからだ。
『みんな……』
それは昔の夢。
あの夏の戦いを乗り越えたあとの賑やかで楽しかった日々…………
僕は、映画か何かを見ているようにみんなとボクが戯れているのを見ていた。
みんな楽しそうで。
ボクも楽しそうで。
“戻りたい”……そんな風に思うくらい、賑やかで騒々しい、だけどキラキラと輝くような光景だった。
みんなのところに戻りたい……
仲間のところに帰りたい……
いつしかそんな感情が僕の内に湧き出してくる。
だけど、そこでボクがこっちに振り返って言った。
━━━━━[誰モ助ケルコトガデキナカッタクセニ?]━━━━━
『!?』
彼は僕のはずなのに、自分自身から向けられるその冷たい声と目に悪寒が走り、思わず身震いする。
━━━━━[勝手ニ諦メテ、勝手ニ見殺シニシタノニ、ヨク言エタネ?]━━━━━
『な……』
違う……
見殺しになんて……
僕は……ッ
━━━━━[ソウダヨ]━━━━━
『!!』
━━━━━[彼ダッテ頑張ッテタヨ?]━━━━━
『───────────ッ!!』
いつの間にか、目の前には《彼女》がいた。
《彼女》だけではない。
みんな同じように僕を見ていた。
憐れむような目で僕を見ていた。
━━━━━[アノ時ダッテ、最期まで頑張ッテタクレテタモン。
ネ?]━━━━━
『あの時って……』
《彼女》は“アノ時ダヨ”と言って手を上げどこかを指さし、僕もつられるようにそちらに視線を向ける。
『!』
そこにあるのは二度と見たくない光景だった。
今僕がここにいる原因となった、“あの日”の光景。
最期の、あの時の光景だった。
《彼女》が手を伸ばし、僕も伸ばす。
だけど、いくらボクが手を伸ばしても《彼女》には届かない。
━━━━━[私モ頑張ッタンダケド…
届カナカッタネ……]━━━━━
『…………ッ!!』
悲しそうなその言葉が心に刺さる。
そうだ…………
僕は《彼女》の手を掴むことすらもできなくて……
ボクの言う通り足掻くこともなにもかも途中で諦めて……
最期まで足掻けたはずなのに……
最期まで……
━━━━━[足掻くケバ何カ変ワッテタカモシレナイノニネ]━━━━━
『───────ッ!』
僕の心を突き刺すような彼の言葉に奥歯を噛み締める。
そんな僕を見て《彼女》はボクを嗜めるように口を開いた。
━━━━━[モウ……ソンナ風ニ言ッタラ可哀想ダヨ]━━━━━
そして《彼女》はクルリと僕の方へ振り返ると、昔と何ら変わることのない微笑みを浮かべた。
━━━━━[ネェ、───────クン、**********]━━━━━
いつもそこで目が覚める。
夢の最後、いつも《彼女》は微笑んで何かを言ってくれるのに、その《彼女》の声が聞こえなくて、聞こえないままいつもそこで目が覚めてしまう。
『っ…』
僕はフラフラとベッドから立ち上がり上着を羽織るとそのまま部屋を出た。