中編

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それからあっという間に放課後。



オレは霧野と一緒に部活へ向かう。




「なー、神童さ、何かあった?」




霧野からのよくわからない質問。




「何かって何?」



オレは質問を質問で返す。




「んー、いいことあったとか?」




「いいこと?」




今日あったいいこと?
あいつと出会ったこと?
それっていいことに入るのか?




「特にはないと思うが…。」




「ふーん、オレの思い違いか?
ま、何かあったらすぐにオレに報告!
…しないと、わかってるよな?」



そう言って真っ黒い笑顔を向けてきた。



「あ、あぁ……。」




たまに霧野は黒くなる。

言っちゃえばドSになる。




あー、怖い怖い。



でも幼馴染な関係上、縁を切るなんて絶対無理だ。




「ん?なんだ、あいつ?」



霧野はいきなり立ち止まり、遠くをじっ…と見る。



「どうした?霧野?」




「いや、ほら、あそこにさ、誰かいるだろ?何かをきょろきょろ探しているみたいじゃないか?」



そう言って霧野が指をさした先を目でたどる。




「あれ……、あいつって、もしかして。」



オレの目には今日裏庭で出会った彼女らしき人物が映った。


あっちはこっちに気付いてはいないようだ。




「知ってるのか?神童。」




「あぁ、まぁ、な。それにしても、何やってるんだ?」




遠くにいる彼女は霧野の言うとおり、何かを探しているように見える。




「なぁ、神童、声掛けてみるか?困ってるみたいだし?」




「別にどっちでもいいが…。」




「どっちでもいいって何だよ…。行く?行かない?どっち?」



霧野はいきなり俺との距離を詰めてきた。



「いや、オレに聞く必要ないだろ。
ってか、顔近いっ!!!変な誤解されるからやめろや!」




「え?何?オレと神童が出来てるって?まさかぁ、そんな思考持つ奴いないって。」




霧野はそう言ってハハッと笑う。





「あ、神童くん!!」





「あ、気づいた…。」




彼女がオレに気付いた。


でも、彼女はオレたちを見た瞬間、顔を赤くして。




「…ごめん、私二人のラブラブタイム邪魔するつもりなかったの!ごごご、ごゆっくりっ!!」




そして彼女は風のように走り去っていってしまった。
…途中転びそうになりながら。



オレと霧野は唖然とする。



「なぁ、霧野。激しく勘違いされたんだが、どうすればいいんだ?お前のせいだぞ。」



普段のオレは、責任は一切引き受けるやつだけど、今回ばかりは霧野に押し付ける。



「いや、うん、本当にごめん。
さすがのオレでも、オレあいつのこと知らないし、どうしようもできない。」




「っんな無責任なッ!!!」




「あ、オレ部活行ってくるわー。
みんなには何とか言っておくから、うん、後は頼んだっ!あ、解決するまで部活くんなよっ!」




「はぁ?!おい、霧野!!!キャプテンはオレだぞ!!」




…霧野の姿はもう見えない。

あいつ結構足早いからな…。




「オレにどうすれと……。」



オレはため息をついた。いや、もうつくしかない。


…とりあえず、あいつに会うところから始めないとな……。








再会したにもかかわらず



彼女は激しく勘違いをした

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