中編

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「神童、すまないな、いきなり抜けて。」



急いでグランウンドに戻った蘭丸くんは申し訳なさそうに神童くんに謝った。


私は蘭丸くんのユニフォームをちょっとだけつかみながら、蘭丸くんの後ろに隠れる。


だって…、神童くんかっこいいんだけどなんか怖いから。




「いや、いいさ。……こいつは?」




神童君は蘭丸くんの後ろに隠れていた私に目を向ける。


ってか、こいつ呼ばわりですか、神童さん。


いや、いいんだけどさ。




「あぁ、相崎莉緒っていうんだ。」




「なんで霧野のジャージを着てるんだ?」




「ちょっとオレのせいで水攻めにあったみたいで…。そのまま帰ろうとしてたから強制的に着替えさせた。」




「あぁ、例のファンクラブか?」




「そうだ、ホント参っちゃうよ…。」




そう言った蘭丸くんの表情は苦笑い。



そんな蘭丸くんもかっこいい。



あぁ、やばいな自分。
蘭丸くんが好きって気持ちがどんどん溢れてきちゃう。



ゾクッ



「!!」



いきなり寒気がした。







あは、あはははは、……さっきからいろいろな視線が私に突き刺さってくるの気のせい…だよね。



うん、気のせいだと信じたい。



でも、でも!!!!





うぅ、怖くて横とか後ろとかも振り向けない。




「らら、蘭丸くん。」




「ん?なんだ相崎?」





「わ、わた、私、あっちで見てるね…!練習ががが、頑張って!!」






「?あ、あぁ、ありがとう。」




そう言って蘭丸くんは私に微笑んだ。



そのとたん



きゃーーーー!!



と黄色い声が上がった。





発生源は分かってる。





さっきまで私にままならない視線を向けていた、女の子たち。




「霧野様ぁぁ!!最高ですぅ!!」



うん、蘭丸くんはかっこいいもの。
最高なのは当然です。




「その微笑みを私にぃ!!」



ごめん、この微笑みは私に向けられたものなのでっ!



「もう霧野様のためなら死ねる気がするっ…!」



さすがに死んじゃぁまずいと思うよ?
まだまだ人生は長いんだし……



…って、私は何を勝手に!!




「相変わらずだな、霧野?」




「そういう神童こそ、お前のファンなんかあっちにたくさんいるぜ?試しにそっちに向って笑ってみろ。」




「だが断る。さぁ、早く練習やるぞ。」




「はいはい、あ、相崎、最後までいるなら一緒に帰らないか?」




「え!う、うん、いいよ?」




「じゃ、サッカー部の練習終わったら先に校門行ってて?」




「はーい!」



やった!今日は蘭丸くんと帰れる!!
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