短編

□泣キ虫な君
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――昔からの泣キ虫は今も変わらない。







「もう!拓人はまた泣いてるの!?」




拓人の家を訪れるといつものように拓人が泣いていた。




「な、泣いてなんかいないっ!」



そう否定する拓人だけど、思いっきり涙が出てる。


それにさ。





「うそ!私が拓人のこと何年見てきたと思ってるの!!」




「……14年…。」




「いや、真面目に答えなくてもいいんだけどさ。」




「だって…。」





そこで真面目に答えるのはいかにも拓人らしい。



だけどまぁ、それは置いといて本題に入ることにしよう。




「もう、今日はどうしたの?」





「俺のせいで雷門サッカー部が…。」





「はぁ、またそれ?いつも言ってるでしょ!拓人のせいじゃないって!」




「でも、キャプテンの俺がちゃんとしてないから!!」





「拓人は十分頑張ってるよ!!私が保証する!」




ここまではいつもの会話。


でも今日はいつもと違った。




「…円華、俺、もうどうすればいいかわからないんだ…。」




いつもならここで、拓人がありがとうって言ってこの会話が終わるんだけど、今日は違う。




さらに弱い部分を拓人が見せてくれた。
それほど拓人は追い込まれてる。




だから私は私なりの答えを拓人に言った。





「拓人は、拓人のままでいいんじゃないかな?私はそのままの拓人が大好きだから。」





「!!…そうだな。円華ありがとう、いつもごめん…。」





「あ、また泣いてる。」




やっと止まりかけていた拓人の涙だったけど、また拓人の瞳から溢れ出してきてる。




「ち、ちがっ!これは…!!」




慌てて顔を隠す拓人だけど、もう遅いもんね!




「私はそんな拓人も大好きだよ?だから隠さなくたっていいじゃん。」




私は拓人の手を優しく握った。



「―…ほんと、円華には敵わないな…。」





「えへへ、神の拓人から褒められちゃった!」





「調子に乗るな!って、あれ、円華まで泣いてる…?」





「え、うそっ!なな、なんで!?」





「もらい泣きか…?」





「…かもね。……それにしても、二人して泣いてるのは変な感じがする!」





「そうだな。円華はいつも泣かないからな。たまには、いいんじゃないか?」






「それもそうだね…!」






ねぇ拓人、君が泣くときは私がいつもそばにいて、ちゃんと支えてあげるから。



その悲しみとか辛さは2人で半分こしよう?



その分、喜びも嬉しさも楽しさも2人で半分こ。




2人なら1人じゃできないこともなんとかなるんだからさ……。












(泣キ虫な君はまた強くなったね。)

(…誰かさんのおかげでな。)

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