短編

□策士なキミ。
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「円華さ、今から俺言うことにさ、好きか嫌いで答えてね?」





「は?意味わかんないし。」





突然机の前にやってきた、ピンク髪の美少女、…じゃなかった、美少年。




こいつホントは女なんじゃないかって心のどこかでいつも思ってる。





これが男だったら私は何?ってなるよ、うん。女だけど。



本当に女っぽくて軽くその容姿に嫉妬しちゃう。




「あのさー、今オレのこと女っぽいとか思わなかった?」





「えぇ!?まさかの読心術!?」




今思ってたことをズバッと言い当てる蘭丸。





「ふーん、やっぱり思ったんだ。」




こいつ…っ!
絶対に一か八かで言ったな!!




「…いや、うん、そんなことは決して思ってないよ?……たぶん。」





「おい、たぶんってなんだ、たぶんって。」





「や、やだなー!ほら、怒らないの!蘭ちゃん!」





「オレが蘭ちゃん言われるの嫌いなの、知ってるよな?」





……うん、私は地雷を踏んだね。


蘭丸の周りにはもう黒いオーラしか見えない。





「その…、ごめん…。あ、そうだ!ほら蘭丸がやろうとしてたことやろう!そのために来たんでしょ!!」




逃げ方としては苦しいかな……。

ってか、絶対ばれてるよね…!!




「あらかさまに逃げすぎ。まぁいーや。」




「え?いいの!?」




予想外の返答に私は軽く目を見開いた。
いつもは怒るのに今日の蘭丸は違うらしい。



「何、怒ってほしかった?え、円華ってMなわけ?」




「はぁ!?変な勘違いしないでよ!!」




「うそうそ、じゃぁ、好きか嫌いで答えろよ?」




「え、うん。」




「じゃぁ、チョコレート。」




「好き!」




「アイス。」




「種類によるけど好き!」





「いちご。」





「好き!」





「カレーライス。」





「好き!」





「ぶどう。」





「好き!」





って、何これ、私の好きなものばっかりじゃん。


じゃぁ、もう適当に答えてもよくない?
めんどいし。





「お菓子。」





「好き。」





「サッカー。」





「好き。」





「オレ。」





「好き。」






………ん?オレ……?





「…っ!!」




バッと蘭丸の顔を見る。





「好きって言ったよね?」





めっちゃ笑顔の蘭丸。
その笑顔にはなんだか黒いのもが混じっているような…。



ってか、完璧にはめられた。

こいつわざと好きなものばかり言ったんだ。

面倒になって私が適当に好きっていうことが分かってたんだ。





「あのさー、もちろんわざとだよね。思い切りはめるつもりだったよね?」





「え?なんのこと?」





「うわー、その笑顔ウザイくらいに輝いてる。」





「は?何?悪い?」





「うわ、キャラ変ったよ。ってか、なんで私が好きだなんて言わなきゃいけなかったの!?」





「オレが円華のこと好きだから。」





「……は?」





言っている意味が分からない。


この美少年蘭丸が私のことを好き?


え、うん?は?さっきのは空耳なのか?




「やっぱ、好きな人には一回でもいいから好きって言ってもらいたいじゃん。」




……空耳じゃない。



「あー、その、うー、ごめん、ちょっと混乱中…。」




なんで私なんかがって思う反面、私でいいの?って思う自分もいる。



「…オレのこと、好き?」




「え!?うーん…。」




蘭丸のこと、好きか嫌いかって言われると、好きの方に入ると思う。




でも、それが恋愛の好きに入るのかは分からない。




私は蘭丸のこと、どう思ってるんだろ?





「やっぱり、オレのこと嫌い?」





「き、嫌いじゃないよ!!蘭丸のこと嫌いなわけないじゃん!」





「好きってわけでもないんだろ?」





「そ、それはーー…。」




完璧蘭丸にばれてる。



ってか、蘭丸は私のことよくわかってる。




それが嫌じゃなくてむしろ嬉しいって思うのはなんで…?



もっと私のことを知ってほしいと思うのはなぜだろう?




「まぁ、いいさ。今は片思いでも両想いになれるまで頑張るし?」




そう言って笑う蘭丸に不覚にも胸が高鳴る。




元がカッコいいってのもあると思うけど、それだけじゃないのかもしれない。




なんだ、答えは最初から出てるじゃない。





「蘭丸、私も蘭丸が好き…だよ。」





「え…?は?本当に…?」



すっごく驚いている様子の蘭丸。



「…たぶんだけど。きっと好きなんだと思う。」




「たぶんでもいい!やったっ!!」



そう言う蘭丸の表情はとても嬉しそうで、
そんな彼を見ていると思わず私の顔が綻んだ。




「 円華!!」




「きゃっ!ちょ、蘭丸!」




蘭丸がいきなり抱きついてきた。

嬉しいけど恥ずかしい。

でもでも!!




「蘭丸!恥ずかしいから離してよ!」



なんて言っても離してくれそうにはない。



「…もうっ、蘭ちゃん!!」



蘭丸の抱きつく腕の力が緩んだ。

お?効果は抜群…?




「へー、ふーん、ほー、そんなこと言うんだ?」



「え、ちょ、蘭丸さん、顔が近いッス。」




「蘭ちゃんって一回言うたびにキス一回ね?」




「は!?何それ!!」




「拒否権なし。んじゃ、イタダキマス。」




「ちょ、ま…っ!?」








策士なキミ。



(実は私が蘭ちゃんっていうことも予定通りだったんでしょ?)

(まぁね、オレって円華のことだと天才だし?)

(はぁ?意味わかんないし!)

(どうでもいいけど、蘭ちゃんって言ったからキス1ね!)

(ハッ!!やっちゃった…!)

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