あなたといたい。改訂版

1。改訂版


2ページ/51ページ




Prologue
──SPから捜査室へ──




 オレ、一柳昴はこの度桂木班を離れ、緊急特命捜査室に異動することになった。通称、警視庁の【すぐやる課】【雑用室】と呼ばれる捜査室と、警備部第一係の桂木班は、以前一緒に要人警護した事がある。急な来日で捜査室を警護担当に指名して来たが、命をプロ集団に狙われている要人を護るには人手も時間も不足し、昔からの知り合いだった桂木さんに、捜査室長の穂積さんから依頼が来たのだ。
 捜査室は個性的だが仕事の出来る奴らの部署で、任務はスムーズに完了した。どうやらオレはその時、穂積さんに気に入られたらしい。

「穂積は俺とは違うタイプだが、優秀なヤツだぞ。得るものも多いと思う。どうだ? 昴」
 正直迷いもあったが、結婚して幸せそうな海司と結菜を見るのがちょっとキツかったオレは、桂木さんのその言葉に背を押されるように異動を決めた。

 上がりの時間になり、報告書を書く為にSPルームに戻ると海司がいた。

「お疲れ。海司、一人か?」
「あ、お疲れ様です。昴さん、異動って本当なんスか?」
「なんだ、もう聞いたのか? ああ、本当だ。急な話だが、面白そうな部署(ところ)らしいからな。来月から行く事にした」
「えっ? 来月ってすぐじゃないスか。……ずいぶん急ッスね」
「向こうも、人手が足りないらしい」
「昴さんが行っちゃうと、寂しくなりますね」
 海司がしんみりした口調で言った。

「お前にも世話になったな」
「行く前には無理ですけど、後からでも飲みましょう。連絡しますから、絶対来て下さいよ」
「フッ、ああ。ありがとな」
「あ、そうだ。異動先って、緊急特命捜査室ッスよね?」
「ん? そうだが、なんだ?」
「そこに俺と結菜の幼なじみで、真山なまえってヤツがいるんスよ」
「へぇ、どんなヤツだ?」
「口は悪いしやんちゃなヤツなんスけど、頑張り屋で根性あるし、腕も立ちますよ。俺が柔道みてやってたんッス。一見そんな風に見えないスけど、強いスよ」
「じゃあ、海司の弟子か、会うのが楽しみだな。しかし、お前が口が悪いって言うんじゃソイツも相当だな」
「ハハハ。だけど、アイツはちょっと事情があって……昔から苦労してるんです」
 何かを思い返すような顔で言う。

「なのに曲がんねぇで真っ直ぐで。ホント、俺達の自慢の弟分なんスよ。けどあいつ、無鉄砲でね。すぐ無茶やらかすんで俺も結菜も心配してたんッス」
 海司は、一旦言葉を区切り『でも、昴さんが一緒なら安心ですね』と、笑みを浮かべてから、オレにもう一度『アイツの事、よろしく頼みます』と頭を下げた。

「ああ、わかった。任せろ」
 そう返しながら、オレは何となく真山なまえに興味がわいた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ