彼女の事がもっと知りたくて、ご飯を食べながら色々話題にしてみた。
「なまえは、朝はご飯派か?」
「うーん……パンとか、麺とか、シリアルの時もあるけどぉ。食パンは、ミミがどうも苦手で。僕、結構好き嫌いあるんだよね……。辛いの、苦いの、匂いがキツいの、ダメ。あとはグリンピースとか……」
「あ? グリンピース? お前も? オレも苦手。少しなら何とかなるけど炊いたのは、ダメだ」
「あー僕も、アレはなあ……。よけてもご飯がグリンピース味になってて悲惨だ」
「ふふ……。でもお前、簡単な物って言ったけど、結構色々あるじゃないか。大変だったんじゃねー?」
「ああ。暇な時に作って冷凍した物に、ちょっと手を加えて作ったんだよ。出汁とかは市販の使ってるし、手抜き料理で悪いけど……でも、今日一日昴が元気で働けますようにって思いながら作ったよ? 朝、食べないと元気出ないと思って。本当はさ、もっと格好つけたいところなんだけど。最初から無理しても、すぐボロが出ちゃうかなーって……」
(オレが元気で働けるように、かぁ……)
その言葉にじんわりと嬉しくなった。
(なんか良いなー。こういうの。惚れた女がこんな風に自分を思って、色々してくれるって幸せだな……)
そう思いながら、彼女の手料理を味わった。
「ごちそうさま。朝から幸せな気持ちになる飯だった。ありがとうな」
「お粗末様でした。こちらこそ、残さず食べてくれてありがとう。一緒に食べるご飯って幸せだね」
(彼女もオレと同じ事考えてたのか)
またちょっと嬉しくなった。
「あの……」
『ん?』と視線を上げると彼女が、不安気に瞳を揺らしてオレを見てた。
(急に、どうしたんだ……?)
そう思いながら、続きを待った。彼女の唇がおずおずと開かれる。
「……昴、また……またさ……。一緒にご飯食べられるんだよね?」
(なんだ、そんな事か)
内心ホッとして、ニッコリと微笑み答えた。
「ああ。これから何べんでも一緒に食べられるよ」
その返事に今度は彼女がホッして、とても嬉しそうに微笑んだ。それを見たら何だか優しい気持ちになった。オレは彼女が淹れてくれた珈琲を飲みながら、暫く幸せな気持ちで彼女の笑顔を眺めた。
柔らかな朝日の差し込む食卓で、感じる穏やかな幸せ。
そんなオレ達の始まりの朝だった───。