あなたといたい。番外編

□チビ助の所轄事件簿。
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「発掘って、化石やないんですから。それに、お忘れとちゃいますかぁ? 室長にお嬢のこと教えたの、僕ですよ。僕。この中では、付き合いは僕が一等、長いんですよ。それに僕は、お嬢の初代の相方ですしぃ」
 また、奇妙な東京弁で言い出す。なんだかおもしろくない。

(気に入らねー。なんで、こいつらが自慢げなんだ。あいつはオレのだ)
「でも、今はオレの相棒で、オレの妻だけどなー」
「昴も藤守も、アンタ達、かんじ悪いわねえ。チビ助をここにスカウトしたのは、この私よ。昴、私に感謝しなさいね。チビ助にめぐりあえたの、私のおかげでしょう?」
「くだらない」
「んまーそんなこと言って小笠原、アンタ。悔しいんでしょう?」
「まぁ、まぁ、そのくらいにしてください。ボスも、子供じゃないんですから。それより、チビを指名だったんですか?」
「そうなのよ。真山をぜひ、ってね。最近多いのよ。あの子の優秀さに気付いて要請してくるのがさ。あの子が次あたり、異動じゃないかって噂もちらほら流れてるしねえ。おおかた様子見にお試しで使って、具合が良ければその機会にでも自分の部下に引っ張りたい連中がいるってとこじゃないかしら」

 そんな会話をしたのが、梅雨の初めの時期だった。あれから季節は移り、夏になった。彼女も如月も帰宅もままならないことも、よくある程多忙だ。だが帳場の立った麹町署が近いこともあり、何かのついでにたまに捜査室に顔を出す。彼女は『勉強になってる』類のことを少し言うが、多くは語らない。彼女が語らないことは如月が報告してくれる。彼女と組んだのは、麹町署の巡査長で滝口というヤツらしい。たたき上げの刑事で、悪いことにそいつは女刑事が嫌いだということ。それに向こうで、しょっぱなに[オカマ室長率いる問題児の寄せ集め室]などと、うちの連中の陰口を叩く本庁組の奴ら相手に彼女が『取り消せ』と詰め寄り、ちょっとしたいさかいが起きたらしい。その時は指揮官が来て事なきを得たようだが、その一件から[男オンナ]だの[粗暴な鬼オンナ様]だのと、そいつらが彼女の陰口を言うようになり、雰囲気は最悪なんだと言う。如月の話からすれば、彼女は苦労していそうだ。

「如月、なんでもっと守ってやらんねん。その話がほんまなら、お嬢は俺らの為に怒ったんやろ? なんで黙っとるんや」
「え? 藤守さん。俺、黙ってなんかいませんよ。だけど、その本庁組の奴らって、前に夏合宿の道場でチビが投げ飛ばした奴の仲間らしいんです。仲間の面子を潰したって、根に持ってるみたいなんですよー」
「そういえば、あの一件と同じだな」
 明智さんが、眉間にシワをよせる。

「要は投げ飛ばしの件も、それも、チビ助の出来がいいからってとこじゃない? 男の嫉妬よ。全く、くだらないったらないわね」
「それで、チビはどうなの? 如月」
「うーん、それがですねー。小笠原さんも知っての通り、例によって例の如くなんですよねー。全然表に出さないんですよ。平然としてます」
「なまえの性格からしてそうだろうなあ。疲れていようが、堪えていようが、平気そうにするよ。あいつは。なあ如月。捜査進みが良いなら、そろそろ帰宅出来そうか?」
「ええ。今夜は帰っていいって話でしたよ。とんでもなことが発生すれば、徴集されますけどね。たぶん、大丈夫と思いますよ。一柳さん。チビにうまいもんでも食べさせてやって下さい。あいつ、頑張ってますからね」
「ああ、そうする。如月、お前も暑い中、毎日大変だったろ。帰ったらゆっくり休めよ」
 如月をねぎらったとこで、スマホが鳴った。出ると、へろへろな彼女の声がした。


「すーばーるぅー。ヘルプ、た、すけにきてーー」







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