あなたといたい。(21。〜 )

□34。
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 その映像を見て感じた何か──それは、忘れてたオレの記憶だった。ずーっと昔、埋もれていた記憶。
 オレと彼女はあの日、警視庁で出会うずーっと以前に出会っていたんだ。

   ● ○ ● ○

 最近、お母さんの具合があんまり良くないみたいだ。前は庭で僕と遊んだり、お父さんと三人でドライブしたりしたんだけど。このところ、横になってることが多い。僕もお父さんもトメ達も心配してる。お父さんの相棒の山野辺のおじさんも心配していて、いい療養所の話を聞いて来てくれた。『評判は良いが東京からはだいぶ離れてる。入る入らないを決める前に、見学が出来るからとりあえず見に行けよ』と言われたらしく、お母さんの具合の比較的いい日で、お父さんの非番の日に早速三人で見に行った。
 高速に乗りずいぶん走ってたどり着いたそこは、すごい田舎だった。お母さんはそこに着く前から『こんな遠い所にひとりなんて、嫌だわ』と難色を示した。
『せっかく来たんだ。とりあえず見てみよう』とお父さんが言うのでお母さんは『じゃあ、見るだけよ』と見学しに来た。

「あらー、緑が多いからかしら。空気がきれいね。すがすがしいわ」
 お母さんはそんな事を言い、まるでピクニックにでも来たみたいに見て回った。

「ねえ、ねえ、お父さん。結局お母さんはここには来ないんだよね?」
 こんな遠くにお母さんが来たら、会えなくなるのが心配で僕はお父さんに聞いてみた。

「そうだね。あの調子なら来る気はないだろうな。勧めてもきっと絶対嫌がるね。まあ、見学だけして行こう」
 案内板を見たら売店があるみたいなので、お父さんにお金をもらい僕は、みんなの飲み物を買いに行く事にした。




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