short story

□君を守りたいから
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初めて俺らが出会ったのは中学校に進学してからだった。




俺は毎日つまらないだけの生活を送り、何にも興味を示さない、そういうやつだった。
しかしあるとき誘拐されかけていた少女を助けようとした時に…自分のアリスに気づいたんだ。…そして即行アリス学園行きとなってしまった。
これはきっと当たり前の対応だろう。




「君が転校生の翔くん?」




出迎えたのは金髪オカマ。名前は鳴海というらしい。
そのオカマ…否、男は俺の顔をじぃっと見て首をかしげた。…それがどういう意味を持っていたのかは後で知ることとなる。
すぐに笑顔になり、俺の制服を持ってくる。…こんなものいらないのに。




「クラス代表の子がくるまで少し待っててね」




そう言われたので俺はソファーに腰掛けてゆっくりと中の様子を眺めることにした。
絢爛豪華な調度品が立ち並ぶ。…流石はアリス学園といったところだろうか。
しばらくするとノックする音が聞こえた。代表の人が来たらしい。

黒髪に紫の瞳の少女、そして茶髪に栗色の瞳の少女、メガネをかけた優しそうなまさしく委員長という感じの少年が入ってくるのを横目で眺めていた。

その中の一人、茶髪に栗色の髪の少女。…彼女はどこかであったことがあるような気がしてしょうがない。
一体どこで会ったのだろうか。それすらも覚えていないが、どこか懐かしかった。




「はじめましてっ! ウチ、佐倉蜜柑! よろしゅうな♫」

「どうも…。…今井蛍よ……あなた、売れるわね」

「ほ、蛍ちゃん…。あ、初めまして。飛田祐って言います。みんなには委員長って呼ばれてるんですけど」




元気の良さそうな“佐倉蜜柑”に、問題発言有の“今井蛍”、絶対いい子な委員長こと“飛田祐”か…。
なるほど、ここがどういう場所なのか少し分かってきたような気がする。

……でもどうしてなのかは分からないが…“佐倉蜜柑”を見るとなぜか悲しくなる。




「…君はなんて言うん?」

「…佐倉翔」

「ウチとおんなじ苗字やー♬」




確かに。
今思ってみると確かにそうだ。…この佐倉蜜柑という少女と俺は何か関係があるのだろうか。
あと…今疑問に思ったことが一つある。…この少女は、一見ただの元気な少女にしか見えないが…闇を持っているように思った。
一介の学園の代表程度の地位である彼女が持つに相応しくない、瞳の闇。…彼女は人を殺めたことはあるのだろうか。




「ほら、もう時間になるわ。さっさと教室行くわよ、佐倉翔さん」

「翔でいい」

「結構」




どうやら俺とこの“今井蛍”という人物は相性が合わないようだ。…そう思うとこのカネゴンと仲が良さげな佐倉蜜柑が尊敬するに値する人物に思えてきた。
…抱きついちゃってるし。




「…離れなさい蜜柑」

「えー! 蛍のケチー!!」




バカンバカンバカン!!




今のは一体何だ? 気がついたら蜜柑が倒れている。…今井蛍、一体何者?
そう疑問に思いつつ、俺らは教室へと向かう。




クラスは以外にも落ち着いているようで、少し安心した。
…その中に一角だけ別格の雰囲気を放っている場所があった。そこを見ると、黒髪に紅い瞳の少年が堂々と座っている。

コイツがこのクラスのボスか?







そう思いながらその少年をじいっと観察していると、その少年に睨まれる。…おーこわ。
少し後ずさるとそれに気づいた蜜柑がさっきの少年の方へと向かった。

…おいおい、まさしく正反対な二人が喋って大丈夫なのか? 火花が散ることにならないのか…?

そんな不安を抱えつつ、俺は蜜柑を見ていた。




そして蜜柑は少年の隣に座る。
以外にもさっきの少年は蜜柑に対して何も言わなかった。

…意外すぎだっつの。




「こら、棗! いきなり転校生威圧しちゃあかんて!」

「…うっせ」




どうやら少年は“棗”というらしい。
…その棗って奴はどうやら蜜柑に弱いようだ。明らかにほかのヤツらに接する時と態度が違う。
一体蜜柑は何者なんだか…。




「なーつーめー! 聞いてんのー?」




少し寂しそうに蜜柑が表情を曇らせた。…その時俺は意外すぎる瞬間を見てしまう。
まさかあの一匹狼みたいな雰囲気の棗って奴が正反対な性格の蜜柑の頭を撫でた…!?

ちょ、本当に蜜柑は何者なんですか。




「♬」




嬉しそうに蜜柑はにっこりと笑い、棗に抱きつく。
…成程、この二人の関係が見えてきたぞ。……どうりで棗って奴が蜜柑に対して何も言わないわけだ。

棗もボスだが、真のボスは棗さえも甘くなってしまう蜜柑なのかもしれないな。


++




その日の昼休み、鳴海に呼び出された俺は放送室にいた。
ここなら話を聞かれなくて済む、という考えからのようだ。




「君は佐倉蜜柑ちゃんと会ったよね?」

「あ、はい。朝会いましたから」

「…やっぱりわからなかった?」

「何がですか?」




その時鳴海が呟いた言葉をすぐには信じられなかった。
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